“余命あと2年” 元凶コロナにニッチ技術でガチ勝負 宮崎・エア遊具レンタル会社の大逆転物語
【山元洋幸(やまもと・ひろゆき)】 ワン・ステップ代表取締役社長 1977年生まれ。大阪府出身。 宮崎大学大学院在籍中、宮崎商工会議所の中心市街地活性化事業でチャレンジショップを開業後、中古車販売業などを経て、2002年に宮崎市でワン・ステップを設立。 空気で膨らむエア遊具を全国各地の観光施設や商業施設にレンタルする。保有する遊具は約800種で国内最大規模。 エア式のノウハウを生かし、医療用陰圧室や建築現場のセーフティーネットなど多様な商品を展開する。
2020年のゴールデンウィークには、遊具をレンタルするはずだった約1千件のイベントがことごとく中止されました。レンタルのほぼすべてがキャンセルされ、期間中の売り上げは前年比9割減に。夏に復調するかどうかも見通せない状況だったといいます。 山元社長の脳裏には、2011年の東日本大震災のときの苦境が浮かびました。死者・行方不明者2万人超の惨事。被災地はもちろん、全国各地で「自粛、自粛」の声が飛び交い、各種イベントは軒並み中止されました。 山元 「ただ、あれだけの震災でも徐々に自粛ムードは薄らぎ、私たちの事業も同年5月には復調していました。今回も『そのうち、なんとか……』と淡い期待をしたけれど、コロナはぜんぜん違いました」
会社は「余命あと2年」?
宮崎市の本社、千葉市、浜松市、兵庫県姫路市の3支店を合わせ、約30人の社員を抱えています。山元社長は腹をくくりました。同年5月、「最悪の事態」を想定して税理士らに相談しました。会社の資産、売り上げ予測に加え、人件費などコストもすべて洗い出し、社の「余命」を推し量ったのです。 その結果、(1)売り上げが「前年比7割減」のまま推移したら、翌2021年2月に債務超過に陥る(2)売り上げが「前年の5割」を維持できたら、2年間は存続できる――との見通しが出ました。 山元 「本社の社員を会議室に集め、支店をリモートでつなぎ、社の財務状況を説明しました。今後1年は昨年並みの給与、賞与を出す。その先は分からないが、前年比5割の売り上げで持ちこたえたら何とかなる。頑張ってみませんか――と訴えました。 小さい会社ですから、日ごろから、社員一人ひとりの性格や家庭事情も分かっています。雑談ベースでも社の実情を話していましたので、社員たちに大きな動揺は見られませんでした」