“余命あと2年” 元凶コロナにニッチ技術でガチ勝負 宮崎・エア遊具レンタル会社の大逆転物語
コロナにはコロナで勝負
山元社長は事業の“ヨコ展開”を模索しました。遊具以外で自社の強みを生かせる派生商品は何か――。楽器演奏に適した防音室、ワクチン接種会場向けの通路、ドッグラン……次々に具体案を出し、商品化をめざしました。 だが、そう簡単に市場は歓迎してくれません。9月には「ジョイント・エア・パネル」を発売し、メディアでも取り上げられました。ふだんは体育館でのマット運動に使い、災害時には避難所の間仕切りに転用でき、浸水被害になれば避難用ボートにも変身するというアイデア商品でした。でも、期待したほどには売れなかったそうです。
山元「どれが当たるか分からないので、いろいろ挑戦しました。あのころ商品化した中で、しっかり生き残ったのは簡易陰圧室だけでした。海外にはテント型陰圧室があることを知っていたので、遊具で培ったエア方式のノウハウを活用できるかもしれないと考えたのです」 コロナ感染の急拡大で窮地に陥った同社が、再起を賭けるうえでターゲットにしたのもコロナでした。人類が経験したことのない現象を冷静に見つめる中で、アイデアが直感的にひらめいたといいます。 「環境が大きく変化し、世の中が混とんとしたとき、需要と供給のギャップが生まれる。陰圧室はまさに需要が高まっていたので、商機を逃しちゃいけないと、急ピッチで開発を進めました。完成前から社のウェブサイトで告知したところ、全国の医療関係者から問い合わせが相次ぎました。医療施設よりも介護施設の引き合いが多く、これまでの売り上げは累計で2億円に達しました。とくに2021年は1億円超を売り、その年の社全体の売り上げの4分の1を占めました」 陰圧室は社の窮地を救いました。同社の売り上げは2020年こそ4億9600万円と、初めて前年を下回りましたが、翌2021年は5億4300万円、2022年は6億1700万円で、V字回復をはたしました。第8回「ヘルスケア産業づくり」貢献大賞で、大賞に次ぐ九州経済産業局長賞を受賞し、社のブランド価値も高まりました。