実は怖い「近視」のリスクと最先端の研究を学んできた。眼の健康管理の重要性
近視は単なる視力の低下ではなく、失明のリスクを高める「病気」である──この新たな視点が、社会や医学界に波紋を呼んでいます。 実は怖い「近視」のリスクと最先端の研究を学んできた。眼の健康管理の重要性 2024年6月に刊行された『近視は病気です』(東洋経済新報社)は、眼科臨床医としてこの問題を研究してきた窪田良さん(医師、医学博士 窪田製薬ホールディングスCEO)の新著。 2024年7月9日に開催された出版記念イベントでは、近年急増する近視人口に警鐘を鳴らすとともに、その予防や管理の重要性が改めて強調されました。
近視は単なる不便さではない「健康リスク」
近視は生活習慣病のなかでも患者数が多く、もっとも身近な疾患の1つとなっています。 筆者自身、小学生のころから近視でメガネを掛けていたため、自分にとっては“ふつう”の状態。40代に入って、コンタクトレンズ購入の際の定期検診で「緑内障の発生リスクがある」と診断され、にわかに目の健康に着目するようになりました。 窪田さんは本書を執筆した理由について、「近視に関する正しい知識を広めること、そして近視が単なる不便さではなく、将来的な健康リスクを伴う『病気』であることを伝えたかった」と話します。 窪田さんによると、近視はいわば「近くを見るのに適した目」。 現代ではメガネやコンタクトレンズなどで矯正ができるため、あまり問題視していない人も多い疾患だといいます。 その一方で、医学的には強度近視に伴い、より重篤な眼疾患の合併が懸念されているとのこと。 放置すると緑内障、白内障、網膜剥離などのリスクが高まり、これらの疾患は最終的に失明につながる可能性があると、窪田さんは指摘します。
急増する近視人口、日本と世界の深刻な現状
2023年の秋には、文部科学省の調査により「視力が1.0未満の子どもの割合が過去最高になった」という報道がありました。小学生で約38%、中学生で約61%、高校生では約72%となり、いずれも過去最多を更新したとのこと。 今から45年前の1979年度は、視力が1.0未満の小学生の割合は17.9%だったというのですから、当時より大幅に増えていることになります。 しかも窪田さんによると、これは日本だけの話ではありません。 WHOは2050年に、世界人口のおよそ48億人が近視になると予測。近視のリスクに対する危機感が世界的に高まっており、中国ではGDPの約1%(30兆円)が近視によって失われているとして、2018年に近視削減目標を定めた国家計画が策定されています。 なお、近視の原因については、「一般的に考えられている遺伝的要因よりも環境要因のほうが大きい」と窪田さん。 人間の目は本来、獲物を見つけたり、外敵から逃げたりするために、遠くを見る力がきわめて重要でした。 しかし現代生活では、遠くではなく近くに目の焦点を合わせ続ける「屋内での近見作業」が極端に増えています。その結果、生来のプログラムから外れ、近視になりやすくなっていることが、近年の研究から明らかになってきたというのです。