実は怖い「近視」のリスクと最先端の研究を学んできた。眼の健康管理の重要性
鍵を握るのは「2時間の外遊び」
近視の要因やリスクについて語られる一方で、希望を感じさせる話題もありました。 実は近視の予防法として、子どものころからの外遊びが非常に効果的であるとのことです。「驚くべきことに、1日わずか2時間ほどの外遊びで、近視の発症を予防できる」と窪田さんは語ります。 この発見は、台湾でもっとも著名な眼科研究者の一人であるウー・ペイチャン氏の論文で発表されました。 もともと動物実験で、強い光の下で飼った動物のほうが、弱い光で飼った動物よりも近視になりにくいことが示唆されていたそう。そこでペイチャン氏が、これを学童期の子どもに当てはめてみたところ、近視対策として有効であることがわかったのです。 台湾では2010年から、小学生を対象に学校で1日2時間程度の屋外活動をすることを義務付けており、翌年から子どもの近視の率が減少しています。 休み時間になると外遊びをさせたり、スポーツをさせたりして、合計2時間は外で過ごさせるというカリキュラムが組まれているそうです。
点眼薬からARまで、広がる近視治療の可能性
なぜ強い光の下だと近視になりにくいのか、その分子的なメカニズムは完全にはわかっていないといいます。 ただ、動物実験では強い光を当てると網膜内のドーパミンが増えることがわかっており、この作用が重要な役割を果たしているのではないか、と推測されているとのこと。 このあたりのメカニズムが解明されれば、子どもだけではなく、すでに近視になってしまった大人の症状改善にも、新たな可能性が見えてくるかもしれません。 窪田さんによると、最近では近視矯正法の一つとして、目に注すだけでいい「アトロピン点眼薬」や、矯正コンタクトレンズを夜間に装着する「オルソケラトロジー」など、新しい方法がどんどん出てきているといいます。 窪田さん自身が開発した「Kubota Glass®」では、LEDライトを用いたAR技術(拡張現実)により、まるで遠くを見ていると網膜が感じるような映像を投影。人工的に「目の外遊び」を取り入れることで、近視の発症抑制・進行遅延が期待できるといいます。 大人も「近視は治らない」とあきらめるのではなく、目の健康維持に努めながらも新しい情報を追っていくことで、改善の道が見えてくるのかも…と前向きな気持ちになることができました。