ミラノ拠点「セッチュウ」のサステナ定義は「もったいない」 欧州規制への冷静な対応も
ヨーロッパの市場では買ったものを紙の袋か、持参した袋に入れてもらうことのが習慣だ。日本では少額のお金を払えばプラスチックの袋がいくらでももらえるなど、その便利さが優先されている。便利を突き詰めるあまり、サステナビリティを突き詰めることをやめてしまったのが今の日本ではないか。資本主義とサステナビリティは真逆にあるので、考える脳の使い分けも難しい。だからこそ僕たちクリエイティブな人間が違う発想でサステナビリティを視野に入れてゆく必要があるとも思う。
WWD:服作りにおいて「もったいない」は具体的にどのように取り入れている?
桑田:もの作りで参考しているのが1940年代の洋服の作りだ。当時は世界大戦があったから、身を守る服を作る技術が短時間で集中的に生み出された。大戦中だから物資不足でメタルなどの資材が使えない。その代わり、縫い方によって強度を求めた。その頃に生まれたミリタリーの服は、その後のワークウェアやユニホームなど大量生産の衣服のベースになっている。そこに見る「どう長持ちさせるか」の工夫はまさにサステナビリティの発想だ。
また人権面では、多くの工場がファッションデザイナーからの “ラストミニッツ”での対応、しかも毎シーズン繰り返される対応に疲れている。「セッチュウ」は決まった型を継続し、生地をアップデートすることで先が見える商品展開を心がけている。工場にすれば労働時間や利益の計算がしやすいし、僕らからすれば品質が向上してゆくから双方にメリットがある。こういった商品展開もサステナビリティにつながると思う。参考になるのは「iPhone」のデザインの考え方だ。
WWD:生地はオリジナルが多く、気に入った生地は継続して使用している。これも同じ考え方?
桑田:そのほうが生地屋さんからすれば生地や糸を無駄にする必要がない。オリジナルで作った分は責任を持って使い切る。だからオーダーは慎重になる。大量オーダーしつつ、実際にはその一部しか使わない大手ブランドがあるのが業界の現実。工場から「〇〇から大量オーダー入ったけど、シーズン余剰が出そうだ」と教えてもらって高級素材を抑えた価格で使用することもある。僕はミラノ拠点が長く、イタリア各地の工場と密なコミュニケーションをしており、彼らは僕が無駄を出さないことに興味があることを知っているから、余剰が出そうなときは声をかけてくれる。