土壌中のPFAS濃度を測定する方法を開発 暫定マニュアルを公開、農研機構
2023年にまず英語版のマニュアル(非公開)を作成し日本語にも翻訳。データを追加するなどの改訂を経て、今回の日英マニュアルを同時公開した。
操作の簡素化と分析時間の短縮に重点
マニュアルは、「土壌試料の採取と前処理」、「土壌試料からのPFAS抽出・精製」、「測定(定性・定量)」、「使用する試薬と装置」の4章からなる。飲料水や環境水における海外の評価に含まれるPFASの中から選定した30種が分析対象だ。 地方自治体や民間分析機関が多数の土壌試料を分析することを想定している。試薬の容量を精緻に量る器具を使用しなくても、容器から別の容器に試薬を注いで移す方法を採用するなど、操作の簡素化と分析時間の短縮に重きを置いた。
抽出と精製、濃縮を経て得たサンプルは、液体クロマトグラフと質量分析装置で分析する。分析機関ごとに使う装置が違うことも考慮し、メーカー各社が主要機種に対して用意した「メソッドファイル」をマニュアル内に提示。分析者が測定条件の検討をしなくても、装置の機種に応じたファイルを用いることですぐに分析に取りかかれる。
分かりやすくするためにイラストを多用
マニュアルは、地方自治体や民間分析機関で分析者が初めてPFASを扱う場合でも、試料採取から分析までを円滑に進められる作業手順書となっている。分かりやすくするためにイラストを多用するとともに、試料採取、抽出、精製の各工程にチェックシートを掲載することで工程をもれなく進めることができる。
フィードバックで信頼性・汎用性を改良へ
マニュアルを用いた分析では、一般的な農地土壌である黒ボク土や褐色低地土で安定した分析結果を得られる。国内にある381種類の土壌のうちの2つで分析法の妥当性を評価しているだけではあるが、殷上級研究員によると、評価した2つの土壌は炭素含有量が多く、分析が最も困難だと見込まれる土壌。「最も抽出が難しい土壌でも有効な分析方法にしたつもり。不純物が少ないであろう砂をはじめ、ほかの様々な土壌でPFASを分析してもらえるだろう」と話す。