良くも悪くも自分次第、意志と決断力が高みに連れていく。レースエンジニアの実態をローソン、岩佐と組んだMUGEN小池氏に聞く|モタスポ就職白書
裁量の大きさは「楽でもあり、大変でもある」
レースエンジニアと言えば、レースウィーク中はドライバーやチームメンバーとコミュニケーションをとり、PCやタブレットとにらめっこしながら、マシンセットアップや走行計画などに頭を巡らせているイメージだが、レースとレースの間のインターバル期間も、直近のレースの分析や次のレースに向けた準備など慌ただしい日々が続く。 レース業界のお仕事というと、「大変」「休めない」といった漠然としたイメージが先行しがちで、具体的にどういった大変さがあるのかなど、イメージがつきにくい部分もあるだろう。M-TECでは年間118日の休日を確保するよう徹底されており、そのほか有給・特別休暇の取得も可能となっているとのことで、リフレッシュする機会は十分にありそうだ。ただ小池エンジニアは、仕事量が自分の裁量次第という側面が強いのは楽な点でもあり、大変な点でもあるだろうと語る。 「僕はあまり大変と思わないようにしていますが……(笑)」と笑う小池エンジニア。こう続けた。 「立場やチームによっても違うと思いますが、側から見て大変だと思うのは、ドライバーと同じように、エンジニアも自分の裁量で仕事を決められる点です。これは楽な点であり大変な点でもあると思います」 「結果さえ出していれば仕事をしなくていいなどとよく言われますが、それはできません。スポーツ選手と同じで、継続して結果を残すには日頃からトレーニングが必要です」 「休みの時間に自分をアップデートさせる……これも仕事と言えば仕事になるんでしょうけど、それもやる人とやらない人がいます。言い方が難しいですが、自分がどれだけやるかは自分で決められるという部分はありますね」 レースエンジニアもアスリートと同様に、最高のパフォーマンスを追い求め始めると際限がないのだ。小池エンジニアも、レースやテストで収集したデータは、解析しようと思えば際限なくできてしまうと語る。だからこそ、限られた時間でこなしていくためにも効率化が重要となる。 「時間が限られている中でどれだけ効率化するかが重要ですが、効率化のためには(エンジニアリングの)ツールが必要だったりするので、ツールも開発しています。そこに一番時間をかけているかもしれません」 また、そういったデータ解析等のツールを作るには、プログラミングの知識も求められてくるという。 「今までエクセルなどで完結していたものが、今はシミュレーションの時代に入っているので、プログラミングの知識は重要になります。ITエンジニアのような人も各チームで重宝されると思いますね」 「プログラミングはどの業界でも生きると思います。やりたいことがない人は、文系理系を問わずにプログラミングと英語をやっておけば損はないと思います」 個人の裁量が大きい仕事となると、ともすれば手を抜いたり、“そこそこの仕事”で妥協してしまうのが人間の性だろう。その中でストイックに努力を続けられる源は何なのだろうか? 「そこは岩佐選手と全く同じだと思いますが、自分の中ではこのチャンピオンシップで勝つこと、チャンピオンになることは目標ではあるものの、最終目標ではありません」 「その先を常に見ています。それは他のカテゴリーに行きたいとかそういう話ではなく、自分の能力を高めることには際限がなく、ここでおしまいというものはないからです。誰か(ライバル)が止まってくれることはないので、常にやらないといけない。それだけの努力が必要になるんです」