次期政権に期待される『地方経済活性化』と『大都市一極集中の是正』:インバウンド需要を起爆剤に
地方の社会インフラの有効活用を
過度の人口集中が東京都の生産性を押し下げている背景の一つに、社会資本(インフラ)の不足があるのではないか。社会資本には、道路、上下水道、航空、港湾、公園、学校、治山・治水、国有林などがあり、産業や生活に欠かせない公共的なインフラを提供している。 高度成長期には、地方部でも積極的な公共投資が行われ、社会資本の充実が図られた。しかしその後、地方部から都市部への人口移動が加速する中で、一人が使うことができる社会資本が地方部では膨らみ、社会資本の過剰傾向が強まっていった。反面、東京都など大都市部では社会資本の不足傾向が強まり、これが、生産性向上の妨げになっていったと考えられる。
1960年以降の一人当たり社会資本ストックを東京都とその他都道府県で比較すると、1995年頃までは両者とも概ね同水準での増加傾向が見られた。しかしそれ以降は、東京都での一人当たり社会資本ストックは低下傾向を辿り、社会資本不足傾向が強まったとみられる(図表4)。 近年の2015年から2020年の間に両地域の格差は拡大し、2020年時点では、東京以外の都道府県の一人当たり社会資本ストックは、東京都の1.78倍にまで達した。 東京に集中した人口、あるいは企業を地方部に移し、一人当たりの社会資本ストックを平準化していけば、地方の過剰となっている社会資本ストックの有効利用が進み、日本経済全体の効率を高めることが可能となるのではないか。 政府が長らく掲げてきた「東京一極集中の是正」という政策は、今のところ目立った成果を出せていない。そこで、訪日外国人客をもっと地方部に誘導し、そこで観光関連のビジネスを拡大させることができれば、地方が、東京など大都市部から企業や人を吸収することができ、日本経済全体の生産性向上を後押しするだろう。 このように、インバウンド需要を日本経済再生の原動力の一つにすることを、次期政権は真剣に考える必要があるのではないか。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英