日本上陸を果たした「メルセデス G 580 with EQ Technology」は究極のオフローダーなのか?
制限時間いっぱいまでコースをまわりながら、今回のように路面が悪ければ悪いほど、過酷であればあるほど、輝きを増すゲレンデヴァーゲンはやはりたいしたものだと見直したし、だからこそ都会の舗装路だけしか走らないであろう車たちがなんだか不憫に思えてきた……って自分が数年前までそういう使い方をしていたというのに、なんとも身勝手なものである。 それにしてもG450dの洗練さと完成度はちょっと感動するほどのもので、もうこれで今日は帰ってもいいかな、などと思いながらしぶしぶG580に乗り換えることにする。 なんとも魅力的なしぶいねずみ色に塗られたG580に乗り換え、他のEQと同じようにあっけなく起動させ、アクセルペダルを踏みこんで一番印象的なのはやはり静かなことと、加速感が滑らかなことである。静かなことは当たり前だが、走り始めの最初の滑らかさはG580の方がG450dをしのぐ。ロードノイズが大きいコースを走っていたので気にしていなかったのだが、G580には“G-RPAR”と呼ばれる特別なサウンドが再生される。その音色はV8エンジンを想起させる。 G580のラダーフレームの前後アクスルに2つづつ組み込まれた合計4つのモーターは、一基で108kWの出力を誇り、これはEQAの出力と同じ程度のパワーを発揮する。4基合計でのパワーは587ps(432kW),1164Nmもの強力さで、これはG63 (585ps,850Nm)も上回る。なおコンフォートモードを選ぶことにより後輪2基のみでの走行も可能というが、今回は試す時間がなかった。 G580は4輪独立式モーターが走りを制御するため、いわゆるディファレンシャルギアが存在しない。それをメルセデスは、“仮想ディファレンシャルロック”と呼んでいる。
出だしこそ3トンを超える車重を感じさせることもあるが、さすがに「EQA」4台分ものモーターを積んでいることもあり、タイヤが転がり始めてしまえばあとはシームレスに加速し走行し始める。走り始めると驚くべきことに、G450をさらにしのぐイージーさと力強さで、なんの努力もコツもいらないまま恐ろしいほどの力強さで登坂し、何も特別な技術も要さずにオフロードクロール機能を使って急坂を一定速度で降りることができる。 それでは圧倒的にG450dよりもG580の方が乗員にとって快適で楽かと言えばちょっと言葉に詰まる。あまりに力強く、冷淡に悪路をこなす速度と力強すぎる挙動がそう感じさせるのか、あるいは460㎏ほども重くなっていることが原因なのか、乗員に優しい乗り心地は明らかにG450dの方が上のように感じられたからである。 言うまでもなく絶対的な悪路での走行性能はG580 の方が上だし、4輪それぞれを個別にそして的確にコントロールすることのできる究極のオフローダーという主張は間違えない。そしてそれは人間では絶対にできない領域のコントロールである。なんというか完璧で人が入り込む余地のないような緻密な制御で、G450dだとやや苦戦するような場所を有無を言わさず突進するその姿は、たしかに究極のゲレンデヴァーゲンではある。
【関連記事】
- 再設計されたオフローダーのアイコン「メルセデス G580 with EQ Technology」が日本デビュー
- え?これですか?電動ゲレンデヴァーゲンです 見た目も乗り心地もGクラスそのもの 電動Gは愛好家からどう受け止められるだろうか
- さらに優れたドライビング特性とともに登場!電動車含む3台の新型「メルセデス Gクラス」を初テスト!
- 現在生産されているメルセデスGクラスの約60%はG63だ!新型メルセデスAMG G63の全ての情報
- 【Gクラス45周年記念モデル】「メルセデス・ベンツGクラス Past II Future」モンクレールと日本人デザイナー「NIGO」とのコラボレーションによる限定20台のGクラス登場