世界最大級のフィンテックイベントはなぜ盛り上がる? 国家を巻き込んだ「仕掛け」を解説
見逃せない、SFFで発表された「7つのトピック」
SFFを発表場所として多くの新しいサービスや企業間の提携などが公表されているが、ここでは、特に注目すべきものをあげておきたい。こうした発表には、シンガポールが国内での金融ビジネス拡大だけではなく、国際的な決済や金融包摂に力を入れて点が反映されている。 ・Nium、Partior: リアルタイムの国際送金を可能に 国際送金のフィンテックスタートアップであるNium は、グローバル金融機関など(JPMorgan、DBS、Standard Chartered、Temasekなど)が出資するPartior と提携し、支払いインフラを合理化した。Nium は Partior のプラットフォームで承認された初のフィンテック決済サービスプロバイダーであり、金融機関がリアルタイムでの支払い、クリアリング、決済サービスを、24時間365日、100以上の市場と通貨において利用できるようにする。 ・Fexco、Maya: フィリピンで外貨決済サービスを開始 フィリピンのデジタルバンクMaya は グローバル金融サービスグループであるFexco の複数通貨での決済を可能とする動的外貨決済サービス(Dynamic Currency Conversion)を 11万2000 の店舗端末で導入し、国際顧客の利便性を向上させるとともに、2023 年に 540 万人以上の訪問者を迎えたフィリピンの観光経済を支援することになる。 ・Blade Labs: 世界初の組み込み型イスラムデジタル金融プラットフォームを発表 シンガポール発でカタールに展開しているBlade Labs は、分散型公開台帳(Hedera)を利用した、世界初の組み込み型イスラムデジタル金融プラットフォームを発表した。この革新的なプラットフォームにより、シャリーア(イスラム法)に準拠した金融サービスをあらゆるビジネスアプリケーションにシームレスに統合することができることになるため、イスラムフィンテックに多大な寄与となるものである。 ・StraitsX、Ant International、Grab: ブロックチェーンを活用した越境決済 StraitsXは、アント・インターナショナルおよびグラブと提携してブロックチェーン対応の越境決済を開始し、シンガポールのグラブペイ加盟店間でアリペイ+を使用する観光客のシームレスな資金移動が可能になることを発表した。 ・MODIFI:アジア全域の中小企業輸出を促進するための資金を調達 貿易金融などでグローバルに展開しているフィンテック企業MODIFI は、B2B の後払い(BNPL)ソリューションにおけるリーディングプラットフォームとして、SMBC Asia Rising Fund から 1,500 万ドルの投資を発表した。これまでにMaersk などの戦略的投資家の支援を受け、このパートナーシップは、中小企業がアジア全域で国際貿易事業を拡大するためのデジタルソリューションを強化することを目的としている。あわせて、MODIFI と SMBC は中小企業の輸出業者をさらに支援するための覚書(MoU)にも署名している。 ・Tencent、Visa:シンガポールで手のひら認証支払いの試験運用を開始 中国のIT大手Tencent と カード国際ブランドVisa は、デジタル支払いのための手のひら認証技術を導入し、シンガポールを実証実験の場所として選んだ。DBS、OCBC、UOB などの銀行からの Visa カード保持者がこの新しい「Pay by Palm」ソリューションを試すことができ、バイオメトリクス支払いの未来を垣間見ることができる。 ・PayPay、Alipay+:日本での提携拡大 日本のQR決済事業者PayPayは、Ant Internationalのクロスボーダーモバイル決済およびデジタル化技術ソリューションであるAlipay+との提携拡大を発表し、日本全国での加盟店ネットワークを拡大している。PayPayを含む日本国内のパートナーと協力することで、Alipay+は3百万以上の日本国内加盟店をグローバルな決済エコシステムに接続し、現地の事業者や決済パートナーが、訪日外国人に対して国内の電子ウォレットを使ったシームレスかつ安全な決済と旅行体験を提供できるようになる。 この提携拡大により、Alipay+のパートナーアプリ(中国本土のAlipay、香港のAlipayHK、中国マカオのMPay、韓国のKakao Pay、Naver Pay、Toss、シンガポールのOCBC Digital、Changi Pay、EZ-Link、マレーシアのTouch 'n Go eWallet、Public Bank BerhadのMyPB、フィリピンのGCashとHelloMoney、タイのTrueMoney、モンゴルのHipay、イタリアのTinabaなど)を利用する旅行者は、PayPayのQRコードをスキャンして支払いが可能になる。