世界最大級のフィンテックイベントはなぜ盛り上がる? 国家を巻き込んだ「仕掛け」を解説
「金融立国」は何に注力しているのか?
GFTNの発表によって、少し影の薄くなった感もあるが、金融通貨庁(MAS)の現長官であるチア・デル・ジュン(Chia Der Jiun)氏の話は、シンガポールのフィンテックへの取り組みに関する方針を説明するものとして注目を浴びた。 同氏は、フィンテックの未来を形作る上で重要な要素として、コミュニティ、協力、能力の重要性を強調した。特に、業界の課題に取り組むための協力の必要性を強調した。 さらに国際決済銀行(BIS)が掲げるクロスボーダー決済プロジェクト「Project Nexus」を紹介した他、日本の金融庁も参加している「Project Guardian」についても言及し、さまざまな資産のデジタルトークン化のユースケースを追求することによって、経済的な利益が実現可能であると説明した。 デジタルIDの開発、迅速な決済ルート、および決済スキーム間のシームレスな相互運用性の実現など、長期的な能力向上への取り組みについて述べ、低コストでアクセスしやすく効率的な決済を確保することを目指す点にふれた。 また、国内決済手段における相互運用性の重要性を強調し、併存する複数決済手段の断絶に対処し、加盟店がより幅広い顧客層に対応できるようにしていくと述べた。そして、資産のトークン化については、トークンの標準化、ステーブルコインを含む決済、相互運用可能なインフラ、からなる三層アプローチに焦点を当てていると説明した。ステーブルコインについては、規制フレームワークを導入し、スケールアップの障壁を克服するためにグローバルな銀行と連携していくとしている。 生成AIに関する議論については、MASは慎重でありながらも協力的なアプローチを取っていると述べ、Project MindForgeを通じて、データ漏えいやハルシネーションといったリスクを特定し、責任あるAIの利用に向けたガバナンスの取り組みを進めている。 また、シンガポールがサステナブルファイナンスにおけるリーダーシップを強調し、プロフェッショナルのスキル向上のためのトレーニングプログラム、金融機関の移行計画、およびデータ収集を簡素化するグリーンプリント(Gprnt)のようなツールについても紹介した。併せて、気候関連の開示についても、東南アジアにおける脱炭素化の取り組みをサポートしていくことが強調された。