日本食求める外国人観光客増加も食材の魚は漁獲減… ビジネスチャンス逃さぬよう料理人らが政府に提言
日本食に欠かせない水産物の国内水揚量減少に歯止めがかからない中、料理人の有志団体が27日、水産庁の森健長官を訪ね、資源が減った原因を調べる科学調査や評価体制の充実、補助金に依存せず採算の取れる漁業のビジョンなどを提言した。
提言したのは「シェフス・フォー・ザ・ブルー」(東京都渋谷区、佐々木ひろこ代表)。森長官は、資源管理の強化を目指す現状を説明した上で、「今後ともしっかり取り組む。シェフの皆さまも水産物の魅力と資源の持続的利用の大切さをPRしていただければ。皆さまの活動は心強い」と歓迎した。
提言書によると、2019年の訪日外国人旅行者のインバウンド消費は、日本の主要輸出品目として自動車に次ぐ第2位の金額を誇った。さらにコロナ禍明けの今年1~2月の訪日旅行者数は2019年同期比で3%増加したといい、訪日外国人の8割以上が日本食を期待して訪れていることを紹介。これらのデータを基に、日本食の柱となる水産物の経済効果を強調した。
さらに、日本の漁業生産量はピークだった1980年代中盤の3分の1以下に減少し、沿岸漁業に限っても4割以下に落ち込んでいると説明。主力資源の大部分が過去より減少しているとみられ、その原因として環境の変化や資源管理の不足を挙げた。政府は資源管理強化のために法改正を行ったものの、水産予算のうち漁業者の経営安定対策補助に26%、公共事業などに36%を充てている一方で資源の調査・評価や管理の予算は10%にとどまっていることから実際の取り組みが遅れていることを指摘。加えて、補助金に依存しない漁業のビジョンを描く必要性や、事業者や消費者が持続可能な水産物を見分けて応援できるような情報発信体制とトレーサビリティーの整備を訴えた。
提言には佐々木代表とカンテサンス(フランス料理)岸田周三オーナーシェフ、日本橋蛎殻町すぎた(寿司)主人・杉田孝明氏、チェンチ(イタリア料理)坂本健オーナーシェフ、てのしま(和食)主人・林亮平氏、茶禅華(中華)川田智也オーナーシェフが参加。森長官からは、予算確保など「前向きに受け止めていただいた」(岸田シェフ)という。