ユネスコ無形文化遺産のメキシコ料理を大革新! 世界中の一流シェフが訪れるロスカボスの「エディス」とは!?
メキシコ西部、全長1250㎞に広がるバハ・カリフォルニア半島。その最南端にある世界的リゾート、ロスカボスは、北米大陸のなかでもサステナブルな取り組みに積極的なSDGs先進エリアです。2024年5月のレポートに引き続き、ライターの仁田ときこさんと写真家・かくたみほさんが最新の話題を3回にわたってお届けします。まず第1回は、和食よりも3年早くユネスコ無形文化遺産に登録され、フランス料理と地中海料理に並んで後世に残すべきだと認定されたメキシコ料理がテーマです。
15歳の少女が、ロスカボスの風土と食材に恋をして
メキシコ・ゲレロ州の小さな町で生まれた女性、エディス・ヒメネスさんは1977年、15歳のときに職を求めてロスカボスにあるまち、カボ・サンルーカスを訪れた。そしてバハ・カリフォルニア半島の豊かな天然資源に驚き、レストランで働きながらこの地の歴史と郷土料理を勉強した。ウェイトレスからスタートしたものの、故郷の料理を祖母から学んでいたヒメネスさんは、管理職に至るまで多くの役職を経たのち、自身のレストラン「エディス」をオープンする。
伝統的バハ・カリフォルニア料理をゲレロ風創作フードに昇華させた彼女のレストランは、あっという間に美食大国・メキシコのベスト5のレストランに選ばれるに至った。昔ながらの地元料理といえばタコスで決まり、というロスカボスで、そこに近海で獲れた魚介類や地元の野菜や果実を組み合わせ、世界の食通やセレブに支持される創作フードを次々に生み出したのだ。
そしてヒメネスさんは、メキシコと地中海の料理を組み合わせた皿を提供する「ラ・ピンダータ」、世界遺産カリフォルニア湾と太平洋のシーフード料理専門の「トレス・シレナス」など、独自性に満ちた5つのレストランを展開していく。
かつてのロスカボスは、飛行機でしかアクセスできない非常に観光客の少ない孤立した場所だったが、地元の活性化を目指してタコス以外のフードを生み、ロスカボス・ガストロノミーを浸透させたヒメネスさんの功績は大きく、いまや観光局にも頼りにされるまちの名士になった。なぜなら、スターシェフたちがメキシコで生まれた新たな食を求めて、また、起業家たちがヒメネスさんの手腕から経営のヒントを得ようとして、世界中からこの地を目指すようになったからだ。 協力:ロスカボス観光局 Photo:かくたみほ Text:仁田ときこ