「必ず1校は合格できる」高校受験の仕組み 「合格確約」制度まである私立高校受験、都立高校には「受験倍率を見て出願先を変えられる」制度も
中学受験を選択しなかった場合に待ち受ける「高校受験」。公立高校と私立高校が選択肢となるが、志望校合格までにどのような選抜をくぐり抜けることになるのか。フリーライターの清水典之氏が、受験情報の専門家への取材を基にレポートするシリーズ「“中学受験神話”に騙されるな」、複雑な高校受験の仕組みと、その対策について紹介する。【第6回】
* * * 「中学受験に参入されている親御さんから、『高校入試って“全落ち(受験した学校に全部落ちること)”したら、進学する学校がなくなりますよね? 怖くないですか?』と聞かれることがよくあります。中学受験では、併願戦略に無理があって全落ちするケースがあり、それでも公立中学校には進学できるので、高校受験に対してそうした恐怖感を抱かれるようです。 しかし、それは高校受験の仕組みを知らないからで、実は高校受験には必ず1校の合格を確保できる仕組みがあります。何十年にもわたる研鑽で、行く学校がないという事態を防ぐ仕組みができあがっています」 そう語るのは、『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』(Gakken)著者で、Xアカウント「東京高校受験主義」で4万8000人のフォロワーをもつ塾講師の東田高志氏である。 具体的にどんな仕組みになっているのか。ここでは東京都を例に説明するが、全国的に似たようなシステムになっているという。
都内私立高校の受験は主に4パターン
まず都内の私立高校の入試だが、推薦入試と一般入試があり、一般入試には「単願」「併願優遇」「オープン」の3つがある。 一部の難関校を除くと、推薦入試と一般入試の単願、併願優遇は、内申点等の基準があり、それをクリアした生徒なら、中学校の担当教員と高校の担当教員が事前に相談し、入試の前に合格がほぼ確約される。一般入試の単願、併願優遇は一般入試と名乗っているが、形式的に学力試験が課されるだけで、その結果で不合格になることはまずない。 合格が確約されるかわりに、推薦入試と一般入試の単願は、他校との併願は不可となる。併願優遇は併願できるが、その分、内申点等の基準が高く設定されていることが多い。高校側が、なるべく学力優秀な生徒に来てもらうために、「併願してもいいですよ。そのかわり、落ちたらうちに来てね」という制度として用意したのが併願優遇だ。 つまり、高校への進学を希望する生徒のほぼ全員が、学力試験の結果にかかわらず、私立で1つは合格を獲得するので、「進学する高校がない」という事態は起きない仕組みになっているわけだ。 もう一つのオープン入試は、出願に内申点等の基準はなく、原則、学力試験のみで合否が決まる入試で、不合格になることは多々ある。すべての私立高校で実施しているが、早慶附属やMARCH附属、明治学院、開成、桐朋、巣鴨、城北、ICU、國學院久我山などの一部の難関高校には、合格が確約される単願や併願優遇はなく、基本的にオープン入試が主体である。こうした難関校の中にも推薦入試を実施している高校があるが、合格を確約しないタイプである。だから、こうした私立や都立の上位校は、併願優遇で合格を1つ取ったうえで受験するのが一般的だ。