F1メカ解説|フェラーリ、2025年に向けて”実験的フロア”を使用。風洞アップデートが鍵だった?
今季のF1コンストラクターズタイトルをマクラーレンと激しく争っているフェラーリ。しかしそれだけでなく、2025年シーズンに向けた準備にも余念がない。 【動画】角田裕毅、インディカーを初ドライブ! フェラーリはラスベガスGPに実験的なフロアを投入。カルロス・サインツJr.のマシンに取り付けた。カタールGPにもそのフロアは持ち込まれ、今度はシャルル・ルクレールが試した。 カタールGPはスプリントフォーマットの週末だったため、フリー走行で数周走った後に取り外され、アブダビGPまで置いておかれるものと想定されていた。しかし実際には、週末の間ずっとルクレールのマシンに取り付けられたままだった。 このフロアは、2025年に向けた解決策に関する情報を収集するために開発された。しかしドライバーからあのフィードバックによれば、この実験的なフロアは、パフォーマンスの向上には繋がらないかもしれないが、少なくともマシンのバランスを整える上では役に立つことが示唆されたようだ。その結果カタールでは、ルクレールが週末を通じてこのフロアを使うきっかけとなった。 以前の仕様と比較すると、大きく異なるこの実験的フロア。これはふたつの異なる開発スキームを繋ぐモノであり、かつては機能させることができなかったいくつかの古いアイデアを再検討したもののようだ。 フェラーリは今シーズン夏季のシャットダウン期間中に、風洞施設のアップデートを行なった。これにより、風洞実験の結果と実走データの相関関係が改善されたようだ。その結果として、この実験的なフロアが出来上がったものと見られる。 フェラーリもライバルチームと同様、風洞等のシミュレーションデータと、実際に走行するマシンとの間の相関関係に問題を抱えてきた。現在のグラウンド・エフェクトカーは、車高の変化に特に敏感であり、僅かな違いがパフォーマンスに大きな差を生んできた。 今回の実験的フロアで驚異深いのは、エッジウイングのデザインである。これは、2022年と2023年のフェラーリで見られたものに酷似している。 ただ当時は期待通りのパフォーマンスを発揮できなかったため、フェラーリは別の解決策に進む方が得策だと考えた。 エッジウイング後方のL字型の部分は、他のマシンでもみられたものだ。おそらく、数字上はかなり優れたソリューションなのだろう。しかしこの効果を最大限に発揮するためには、他の要素も含めて全てを組み合わせる必要があったということだろう。 例えば、路面に対してより平坦な形状になっただけでなく、エッジウイングが占める長さと、フロア自体が占める長さの比率も変更されている。また金属製のサポートブラケットにも調整が行なわれており、これは必要な柔軟性の程度が異なっている可能性があったためと思われる。 もちろん、フロア下の形状にも変更が加えられているのは間違いない。しかし、それは我々には見えない。 ただフェラーリは、この実験的なフロアを投入せず、従来仕様のフロアでも高いパフォーマンスを発揮していた。つまりいずれのプロジェクトも正しい方向に進んでいると言える。