セレクトショップ「アマノジャク」ディレクターが語る“良いブランド”の定義
「トレンドだから」でオーダーはしない、“良いブランド”の定義
ーアマノジャクでは「ジギーチェン(Ziggy Chen)」や「ナチュラル インスティンクト(Natural Instinct)」、アイウェアブランドの「カメマンネン(KameManNen)」など、独自のセレクトも多いです。 「自分たちのセレクトに100%責任を持つ」という気持ちでセレクトすることを心がけています。自分たちが本当に良いと思ったブランドを提案して売れなかったのなら反省するし、次どうしようかと前向きに対策を考えられますけど「売れ線だから」「トレンドだから」という理由だけでオーダーして売れなかったら「ダメだったね」で成長が止まってしまいそうな気がするので。 ー小山さん流の「良いブランド」の定義とは? そのブランドにしかない突出した強みがあるということですね。お客さんからしても明確な上位互換があると萎えると思うし、我々紹介する立場からしても本気でオススメできないので。技術でもアイデアでも「ここだけはどこにも負けない」という魅力を持ったブランドをセレクトするようにしています。 例えばそこにかかっている「ブラックミーンズ(blackmeans)」。ヴィンテージから着想を得たレザーアイテムを中心に展開していますが、「ショット(Schott)」や「ルイスレザー(Lewis Leathers)」みたいなゴリゴリ感がなく、モダンな雰囲気で着用できるのが強みです。ブランドのもう一つのアイコンである布を継ぎ接ぎして作る「ボロ」と呼ばれるアイテムも、ブラックミーンズのフィルターを通すことによって土臭さがなくなって洗練された印象に仕上がっています。 ースラスラ言葉が出てきて、本当に良いと思って買い付けているのが伝わってきます。ではそちらの「ジギーチェン」は? ジギーチェンの魅力は「パッチワーク・縫製・生地」が三位一体となった芸術点の高さですね。100%オリジナルの生地を用いて、「縫製は言葉」と話すデザイナーのジギー・チェン氏ならではの美しい縫製で、ユニークなパッチワークを作り上げる。「世界一のモノ作りをしている」と胸を張って言い切るほど、自分たちの服にプライドを持っているのも魅力的だと思います。 ーどちらも確かに小山さんがいう「良いブランドの定義」に当てはまっていますね。小山さんが今注目しているブランドは? 個人的に今注視しているのは、「アヴィヴァ ジフェイ シュー(AVIVA JIFEI XUE)」というブランドです。日本で生活した経験もある中国人の若手デザイナーがニューヨークで立ち上げたブランドなんですが、一つ一つの服に対してかけている手間がすごい。例えばこのアウターは、生地を柿渋染めしてその上からオイルド加工をしているし、ボタン一つとってもレザーの上に樹脂コーティングをしていたりと、とにかく手が込んでいます。また、アルチザン的なアプローチなのですが、デザイナーが女性なのでシルエットに柔らかい印象があるのも特徴です。どこか上品さを持ち合わせていて、「サロモン(SALOMON)」のシューズと合わせてニューヨークを歩きたい、みたいな。とにかく「粋」なんですよね。 ー確かに手が込んでいるのが伝わってきます。 2023年6月の展示会で初めてパリに出展したブランドなんですが、アマノジャクでも2024年春夏シーズンから取り扱いをスタートしたばかり。現状、日本で取り扱っているのはウチだけみたいですね。