「またトラ」でサイバーセキュリティ政策にも影響 安全保障と経済活動のバランスは簡単ではない
国防総省はDARPAに自由に研究させ、その成果で利用できるものがあれば国防に役立てるというスタンスなので、軍事目的のためインターネットの研究を進めたというのは話の順序が逆だといえる。 サイバーセキュリティは、コンピュータ技術およびインターネットの発達によって生まれたものだが、自由なインターネットと相反する部分がある。 発電所や交通インフラ、金融機関、病院などに対するハッキングやサイバー攻撃、あるいは詐欺や犯罪行為は、個人の自由や権利より公共の福祉・公益によって制限されるべきだろう。
アメリカでは、前回のトランプ政権時の2018年に、アメリカ国土安全保障省(DHS)の外局としてCISA(サイバーセキュリティおよび社会基盤安全法省庁:Cybersecurity and Infrastructure Security Agency)が組織され、主に重要インフラのセキュリティ政策および対策を統括している。 ■トランプ政権でも基本路線は維持されるだろうが… 2025年からのトランプ政権でも、この基本路線は維持されるだろう。しかし、政策レベルではいくつかの影響が指摘されている。
まず、共和党は保守政党であり小さな政府を是とする。各州の独立性を尊重し、連邦政府による全体統治は、国防など必要最小限にと考える。これは主に産業界の思惑とも一致する。 2024年12月までの時点で、次期トランプ政権では、さまざまな国内産業に対する規制緩和が報道されている。セキュリティ関連では、企業に対するサイバー攻撃被害の報告義務の緩和、AI規制の緩和、スパイウェア規制の緩和がされる可能性がある。
■「重要インフラ・AI・スパイウェア」産業に影響か 重要インフラ 現在アメリカでは、重要インフラに対するサイバー攻撃は事業者に報告義務を課す法案(CIRCIA:サイバーインシデント報告法)が議論されている。これは2022年にCISAによって提案されたものだ。 しかし、企業に報告義務を課すこの法案は、産業界や議会から、企業に余計な負担を課すとして反発が起きている。法案は2026年施行というスケジュールだが、トランプ政権の出方によって法案に何らかの修正が施される可能性がある。