「またトラ」でサイバーセキュリティ政策にも影響 安全保障と経済活動のバランスは簡単ではない
「MAGA(Make America Great Again:アメリカを再び偉大にする)」――アメリカファーストを標榜する次期トランプ政権は、サイバーセキュリティの分野にはどんな影響があるのだろうか。 サイバーセキュリティは、企業経営は言うまでもなく国際経済や国防、安全保障にもかかわる。トランプ氏による一般教書演説(SOTU)もでていない段階で、確定している情報は限られるが、次期トランプ政権で予想されるサイバーセキュリティ関連の影響や変化を整理してみたい。
■アメリカのサイバーセキュリティの基本理念 まず、前提としてアメリカのサイバーセキュリティ戦略は、「自由なインターネット」を支持する立場から、国際協調を基本としている。 その一方で、国防の面から重要インフラに対するテロやサイバー攻撃には毅然と立ち向かう姿勢を示している。この路線は、前回の共和党・トランプ政権から現在の民主党・バイデン政権でも大きく変わっていない。 自由なインターネットとは、ロシアや中国、イランなどの国が主張する「インターネットは国が管理すべき」という考え方に対抗するものだ。
もともと民間の研究から始まったインターネットは、現在でも民間主導の標準体制のもとで機能している。 IPアドレスやドメインなどのリソースを管理する枠組みは存在するが、全体を統括管理する主体は存在しない(国際電気通信連合〈ITU〉や電気電子学会〈IEEE〉といった通信・電気にかかわる国際規格とは異なる)。インターネットに特定の国や機関が介入すべきではないというのが、本来のインターネットだ。 なお、インターネットはDARPA(ダーパ:国防高等研究計画局)の研究から始まっており、軍事目的だったという説がある。間違いではないが、DARPAは国防総省の外郭組織ではあるが予算執行に対して独立した権限を持ち、軍主導で研究を行う組織ではない。