どうなる年金「加入者拡大」「3割底上げ」 制度改正の議論大詰め
年金改革の議論が大詰めを迎えている。焦点は「厚生年金への加入拡大」と「国民年金受給額の3割底上げ」だが、課題もある。 【画像】国民年金は将来的に3割底上げへ パートの人などに厚生年金を拡大も
■財政悪化の国民年金 財源どう確保
まずは、今回の制度改正のポイントとなる「国民年金の給付底上げ」について見ていく。現在、年金制度の見直しが迫っている。 5年に一度の“年金の健康診断”ともいわれる「財政検証」を踏まえ、年末までに年金制度改正案が作成され、来年の通常国会に関連法案が提出される見通しだ。 今回の改正の目玉の一つが、国民年金の給付底上げ。日本の年金制度は「2階建て」と言われていて、1階が20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金で、2階は会社員などが加入する厚生年金となっている。1階部分の給付水準を将来的に3割底上げする案が検討されている。 では、その底上げ分の財源をどう確保しようとしているのか? 2004年の小泉政権時に導入された「マクロ経済スライド」という仕組みを使って財源を捻出するとしている。通常、賃金や物価の上昇に合わせて年金受給額も増えるが、マクロ経済スライドは賃金や物価の上昇などよりも年金給付額の伸びを抑制するため、実質的に年金が目減りする状況となる。 国民年金と厚生年金それぞれの財政が安定するまで実施するというもので、現在も賃金や物価の上昇分に比べて年金受給額は低く抑えられている。 「財政が安定するまで受給額の伸びを抑える」というが、それはいつまで続くのか? 厚生年金は高齢者や女性の労働参加が増えたことなどから財政が安定し、2026年度に終了する見通しとなっている。 一方、国民年金は財政が悪化しているため、2057年度まで続く見通し。2057年度の給付水準は今より3割低下するという試算もある。 そこで、2026年度に終了するはずの厚生年金の受給額を抑制する期間を延長し、それで浮いた財源を国民年金のほうに回すという案が出ている。 厚生年金の浮いたお金を国民年金に回し続けた場合、厚生年金と国民年金の抑制終了時期を2036年にそろえると、国民年金の給付水準は現在の想定よりも3割底上げされるという。