「もしものときのために、あえて紙で残す」預金や保険・証券など「シンプル情報提供」のすべて
保険と証券の整理
次に保険の整理に取り組もう。生命保険に加入すると送られてくる保険証券には、保険金額や受取人など必要な情報がまとめられているため、一括でファイリングしておきたい。保険証券が見当たらなければ、毎年10月ごろに届く「生命保険料控除証明書」にも同様の情報が載っているので代用できる。 「もしこれらの書類が見つからないまま夫や妻が急に亡くなったときは、『生命保険契約照会制度』が利用できます。生命保険協会に問い合わせれば有料で故人が契約していた保険会社を照会できるので、各社に問い合わせてみてください」(貞方氏) 続いては証券だ。1年に一度、各証券会社から届く「特定口座年間取引報告書」を取っておけば、保有銘柄と株数がわかる。ネット証券に口座がある人はIDとパスワードをメモし夫婦で共有しておくと、ログイン後に取引報告書を確認できる。 どこの証券会社に口座があるか忘れてしまったら、保険と同じく「証券保管振替機構」に問い合わせれば有料で照会できる。ただし資産に余裕があり日常的に取引をしていないならば、この機会に売却して現金化するのも手だ。 「相続人が複数いる状態で株や投資信託を分ける場合、誰がどの銘柄を取るかで揉めるケースが少なくありません。売却して銀行口座に移しておけば、後の相続がラクになるはずです」(貞方氏)
「負動産」を売るワザ
おそらく誰もが「手間がかかりそう」と敬遠しているのが、不動産の生前整理だろう。しかし必要な書類とポイントさえわかれば難しくない。 「おすすめなのは、毎年4~6月に届く固定資産税の納税通知書を取っておくこと。相続時に必要な地番や家屋番号はもちろん、不動産の評価額も記載されています。ただし不動産が共有名義になっていると、通知書は代表者の元にしか届きません。保険や証券のように一括照会もできないので、どのような不動産を所有しているのか夫婦で事前に話しておくべきです」(行政書士の明石久美氏) 不動産も見落としていると、追徴課税の対象になるので注意したい。特に、空き家になっている地方の実家などの「負動産」。残された側がひとりで処分するのはストレスが大きいので、なるべく自分の手で片をつけておこう。売却できればベストだが、値段すらつかない土地はどうすればいいのか。 「タダで引き取ってもらえないか隣人に相談してみてはどうでしょうか。たとえ1円にもならなくても、いらない土地の固定資産税を払い続けるよりマシです。相続後に手数料を払えば、『相続土地国庫帰属制度』を利用し国に引き取ってもらうこともできます」(前出の貞方氏) 土地を売るには、隣接地との境界を確定することが大前提。相続実務士の曽根恵子氏が紹介するのは、誰も住んでいない実家を残したままの夫に先立たれた妻のケースだ。 「その不動産は隣家との境界があいまいだったので、夫の死後に土地を処分するために、土地家屋調査士に依頼し隣人の立ち会いの下で測量して境界を確定したうえで、現地の不動産業者に買主を見つけてもらう必要がありました。残された側にこうした負担をかけないために、境界確定だけでも早めに手をつけておくべきです」