ウエルシアがアマゾンとタッグを組んでオンラインによる処方薬の販売を開始…ドラッグストアのさらなる淘汰と再編の契機となるか?
他業界の市場を奪うドラッグストアの脅威
ドラッグストア業界の過当競争は苛烈そのものだ。 日本チェーンドラッグストア協会によると、2023年度のドラッグストアチェーンの全国総売上高は前年度比5.6%増の9兆2022億円だった。コロナ前の2019年度は7兆円台。小売業界の中でも成長スピードが速い業界の一つなのである。 しかし、2023年の店舗数は2万3041。この数は全国に存在するスーパーマーケットとほぼ同じ数だ。ドラッグストアは食品や生活必需品の充実を図り、価格のお得感を打ち出してスーパーやコンビニの市場を奪いとって成長してきた。それが成長の原動力になっていたともいえる。しかし、そのビジネス環境にも変化が生じている。 コロナ禍を経てドラッグストアチェーンの出店意欲が旺盛になっているのだ。2019年度の総売上高は前年比5.7%、店舗は2.0%それぞれ増加していた。2023年度は総売上高が5.6%、店舗は4.3%増えていた。 この状況が続くと、将来的に競合同士の顧客の食い合いが起こってもおかしくない。 ウエルシアはM&Aによって規模を拡大、過度な出店攻勢による疲弊戦を回避してきた。今年2月にも業界3位のツルハホールディングスと経営統合で協議を開催することに同意。資本業務提携契約を締結し、2027年12月31日の最終合意を目指している。 経営統合が実現すれば、売上高2兆円規模の小売チェーンが誕生することになる。
ウエルシアの3つのネガティブ要因とは?
ウエルシアは業界トップだが、決して順風満帆な会社ではない。 懸念点は3つ。1つは足元の業績が軟調なこと。もう1つは最大のライバルであるマツキヨココカラ&カンパニーに収益面で劣ること。そして、安さを武器にしたコスモス薬品がウエルシア地盤の関東エリアで勢力を伸ばしていることだ。 ウエルシアの2024年2月期の売上高は前期比6.4%増の1兆2173億円、営業利益は同5.3%減の432億円だった。マスクや検査キットなど、コロナ関連のグッズの反動減を受けて減益だったと説明していた。 同社の深刻さが露呈したのは、2025年2月期第1四半期だ。営業利益が前年同期間比で25.5%減の54億円となったのである。大幅な営業減益だった。タバコの取り扱いを終了したことで、物販販売に影響が出た。 こうした状況の中で、ウエルシアは2025年2月期上半期の営業利益を、前年同期間比7.9%増の267億円と予想している。第1四半期の数字は、予想の到達を揺るがしかねないものだ。さらに競合のマツキヨココカラとは、収益性で大きな差をつけられている。ウエルシアの直近通期営業利益率は3.6%、マツキヨココカラは7.4%だ。 ウエルシアは郊外型の店舗に強みがあるため、総利益率が40%近い調剤部門を強化し、食品(総利益率約20%)や雑貨(同30%)をフックに集客するというビジネスモデルだ。一方、マツキヨココカラは都市型がメイン。医薬品(同40%)と化粧品(同35%)が中心となっているために利益率が高いのだ。