「育休のブランクを取り戻さないと」焦る女性社員が見つけた「新しいキャリア」 やる気になった原因は会社のある「態度」だった
日本生命保険に勤務する太田原朋子さん(43)は課長補佐だった2018年ごろ、追い詰められていた。前年に出産し、約1年間の産休・育休を経て復帰したが、仕事と育児との両立がなかなかうまくいかない。仕事の予定が入っていても、子どもが急に病気になり、中断したり休んだりする事態が頻発。一時は転職も頭をよぎった―。 【表】学生「子どもほしくない」主な理由は 大学生の19%、子ども望まず
日本は、主要各国の中で女性管理職の割合が特に少なく、男女賃金格差の原因にもなっている。ネックの一つが、出産や育児によるキャリアアップの遅れだ。危機感を持つ一部の企業は格差是正に取り組み始めている。 両立に悩んだ太田原さんはその後、会社の支援を受けて新たな働き方を見つけることができた。後輩たちの「ロールモデル」としての期待がかかる。一体、何がポイントだったのか。(共同通信経済部ジェンダー平等取材班) ▽困難の連続だった復帰直後 太田原さんは勤務地を限るエリア総合職員として2003年に入社。2014年に課長補佐になり、2017年に出産した。 育休復帰直後は困難の連続。「仕事を納得できるまでやりきりたい」と強く思う半面、育児があって思い通りにはいかない。「勤務時間を自分で決められないことが一番のハードルだった」 焦ってもいた。「育休によるブランクを取り戻さないと」。疑心暗鬼にも陥った。「私の勤務時間が限られると、上司も部下も嫌がるのではないか」。子どもは母乳で育てていた。夜間の授乳で寝不足が続く。メンタル面で落ち込み、仕事への自信を失いかけていた。
それを救ってくれたのは、職場の上司や同僚。子どもの発熱などで急に早く帰らないといけなくなったとき、チームのメンバーは当然のように受け入れてくれた。上司の気遣いや声がけのおかげで、帰りやすい空気もあった。周りの支えで徐々に仕事のペースをつかみ、復帰した翌年に昇格した。 上位職にチャレンジさせてもらえたこと自体も大きかった。「これまでの経験や成果をみてくれている」と感じることができたためだ。「(今のような)柔軟な働き方でやっていける」。自信につながった。 ▽役員が「メンター」としてキャリア形成を支援 2023年、日本生命役員との面談で、太田原さんはこんなアドバイスを受けた。 「これまでに培ってきた対人対応力や調整力があなたの強み。これらを生かせる部署でキャリアアップしていくのはどうだろうか」 太田原さんはこの言葉に勇気づけられたという。次は部長職を目指すことになるが、ロールモデルとなる人は周りに少なく、これまでのチャレンジとは「レベルが違う」と感じていた。面談を経て、「今後のキャリアをどのような方向性で目指していくか、前より考えが固まってきた」。