斎藤知事のパワハラを断定、立花孝志氏のマスコミ叩きに便乗…デマを指摘する「ファクトチェック団体」の欠陥
■パワハラ問題については、まだ結論が出ていない JFCの記事は、パワハラの定義について厚生労働省の「パワーハラスメントの定義について」という資料をもとに次のように論じている。 ---------- 「精神的な攻撃」として「大勢の前で叱責する」「ものを机に叩きつけるなど威圧的な態度をとる」などをあげている。 ---------- しかし、資料の該当箇所を読むと、資料には「これらの行為が全てパワーハラスメントに当たることを示すものではない」と注釈がついている。厚労省にも確認取材をしたがやはり「机を叩けば、それだけで自動的にパワハラになるわけではない」という。 また、斎藤氏が自ら認めた「机を叩いた」行為とは、本人による百条委員会での再現によると、机を平手で二回ポンポンと叩いた程度だ。これは、斎藤氏の言い分に過ぎないが、「本人が認めた範囲」で即パワハラ判定ができるかどうかというと、議論の余地があるだろう。 もちろん、きちんとした議論の結果、やはり「パワハラだった」という結論が出る可能性は十分にある。しかし、地元紙の神戸新聞が2024年11月15日に配信した記事では「百条委や第三者委の調査が続いており、結論は出ていない」としている。また、12月25日に行われた県議会の百条委員会においても、斎藤知事のパワハラ問題については最終的な結論は出ておらず、来年2月の定例県議会で証言などを取りまとめた報告を行うとしている。 「文書問題に関する第三者調査委員会」についても、報告書の提出目標を来年3月上旬としておりまだ結論は出ていない状況にある。 ■政治家の発言に対して“裏とり”ができていない また、こちらの記事では「兵庫県知事選挙に立候補している稲村和美氏について、『当選すると外国人の地方参政権が成立する』『外国人参政権推進派』という言説が拡散したが、誤り。稲村氏は外国人参政権を公約にしておらず、この言説を否定している」と結論付けている。 しかし、そもそも記事が示した投稿の表現は「(地方参政権が成立する)かもしれない」となっている。もともと「かもしれない」だったのを、断定的な「成立」という言葉にすりかえて評価するのは、果たして適切なのだろうか。 また、稲村氏の発言について、まったく裏とりをせずに信用している点も気になる。筆者は政治団体「みどりの未来」が、稲村氏が共同代表だった時期に、外国人参政権を推進する政策を打ち出していたと思われる資料を、「緑の党」と同じドメイン名(greens.gr.jp)の下で公開されているサイトで発見した。筆者は12月4日、電話や公式サイトの問い合わせフォーム経由で稲村氏の事務所に事実確認の質問を送ったが、2週間経っても返信はない。 こうしたJFCの記事は、「証拠を多角的に検証する」という、IFCNの倫理規定が求めている基準を満たしていないのではないか。