冬の味覚ズワイガニ漁解禁、福井県「越前がに」の実力をみる
「速むき」は、テレビ局関係者らの目に止まり、地元か全国かを問わず、情報番組に出演したことも数知れない。ビールのCMでイチロー選手と共演したこともある。「昔はね、スタジオのスタッフが黄色いタグを切ろうとしたのよ。福井とか越前とか知らないわけ。世界一おいしい印なのにね。いまでは、そういうことはなくなったから、ブランドが浸透してきているのじゃないですかね」。 「速むき」をめぐっては、「むきむき王子」で売り出し中の長男・克治さん(41)と良きライバル。「息子がね、私とは『流派が違う』と言うんですよ。確かに息子の方が丁寧だけど、でも、早いのは、私の方が早いですよ」と負けていない。
節度を守りながら、おいしくいただく海の幸
本場のカニはおいしい。さぞ、地元の人たちは、その地の利に預かっているのだろうと思ったけれど、望洋樓の梅原さんは「福井県にいても、越前がには高いので、あまり食べませんね。たべて雌のセイコガニでしょうか。それでも普通の日に食べるものではありません」と言う。 地元でもめったに食べられないとは、どういうことかというと、越前がにを含むズワイガニの漁獲量が全体に減っていて、他県に出荷されるようなのだ。板倉さんは板倉さんで「50年も昔の話ですが、セイコガニはおやつ代わりでしたよ。チョコレートの方が高かったくらいです」と懐かしがった。
水産庁によると、ズワイガニは、1970年より前には約1万5000トンの水揚げがあった。しかし、70年代に入って急激に減少し、90年代には2000トン以下、つまり約7分の1にまで減少した。2007年には5200トンに持ち直したが、それでも2013年は3900トンに減っている。韓国船による乱獲も一因だと指摘されている。 そう言われると、ズワイガニが安く食べられることは良し悪しに思えてきた。福井県などでは、水産資源を守ろうと、1月20日までが雌のズワイガニの漁期となっているところ、独自の漁期制限を設け、年内までとした。