冬の味覚ズワイガニ漁解禁、福井県「越前がに」の実力をみる
もともと「望洋楼」は、最上級の越前がにを提供する福井県三国町の料理旅館として知られてきた。3年前に南青山に店舗を出したのだが、同店で提供される越前がには、三国の刀根瑛昌(てるまさ)社長が目利きを取り仕切り、選び抜いたカニを東京に届けることになっている。「カニの目利きができるようになるには、10年、20年かかるのではないでしょうか。それでも一生だと言いますね」と梅原さん。越前がにを提供するお店は都内にほかにもあるが、茹で置きせずに、生の状態から調理してくるのは同店くらいだと思う。 越前海岸から南青山の望洋樓に届けられた越前がには、店の入り口にある生簀(いけす)で管理される。体内の土や泥を吐かせるためだ。梅原さんによると、生簀に7日以上いると身が痩せてくるので、5日以内に食べることが鉄則だという。そのため、同店ではカニの一つひとつにバーコードを付け、何キロなのか、いつ入荷したのかを管理している。
生簀に入った越前がには、いずれも立派で、1杯引き上げてもらう。重さは悠に1キロ以上はあって、足には黄色いブランドタグが付いている。「越前港」と読めた。ここまで育つには10年は必要だという。そして赤黒い背には、黒色の粒がびっしり。これは「カニビル」の卵。これが多いほど、脱皮から日が経っていて、身が詰まっていることの証拠らしい。梅原さんは「これが1.3キロです。『極(きわみ)』がついてもおかしくないくらいですね」と胸をはって言う。
本場、本物の味を堪能する
「極」というのは、福井県が今シーズンから売り出す最高品質の「越前がに」を指す。ズワイガニの産地間競争が激しくなっていることから、さらにブランド化を強化しようという目論見。 「極」は重さが1.3キロ以上、甲羅の幅が14.5センチ以上、爪の幅が3センチ以上という規格がある。解禁初日は、「極」が23杯水揚げされ、最高で1杯10万4千円の高値が付いた。シーズンを通じて500杯とれるかどうかだという。雄ガニ全体の0.5%程度にあたる量しか獲れない。 さすがに極級は値が張るので、一回り小さいサイズを注文した。「うちでは『茹で』『刺し身』『焼き』『しゃぶしゃぶ』をご提供していますが、まずは塩茹で召し上がっていただきたいですね」と梅原さん。そして、大きな越前がには店内の厨房に持って行かれた。