久保建英が示した進化「43/20」 スペイン10傑入り…数字で証明する“圧倒的な武器”【現地発コラム】
アトレティコのシメオネ監督も「久保と対峙するのは簡単ではない」
レアル・ソシエダの久保建英は今季、スペインでのプロキャリア6年目を過ごしているが、今やラ・リーガでも屈指のタレントとしてその地位を確立している。それは彼のアイデンティティーとも言える圧倒的な“ドリブル力”によるところが大きい。 【動画】「メッシ級」久保建英が相手5人の包囲網を抜き去った超絶ドリブルの瞬間 彼のプレースタイルは時に自己中心的ではないかと指摘されることもあるが、その存在は間違いなくソシエダにおいて際立っている。10月27日のオサスナ戦(0-2)は長距離移動を余儀なくされた代表戦直後とあり、久保はベンチスタート。しかし、2点のビハインドを負ったことで後半最初から投入されると、45分間でその力を存分に見せつけた。 ピッチに立つや否や自陣でボールを受けると、いきなり中央突破してシュートを放つ。その後も高いキープ力を生かして右サイドを占拠し、次々とクロスやシュートを狙っていった。最終的にチームは公式戦3試合ぶりに敗れたが、現地では後半のみの出番でドリブル成功率100%を記録した久保がベストプレイヤーと評価された。 5年前、少年時代に過ごしたスペインに再び戻った久保は、持ち味の“ドリブル力”を武器に着実にステップアップしてきた。その能力を初めて示したのは、弱冠18歳だったマジョルカ初年度の2019年9月のことで、ラ・リーガデビューからわずか2戦目のアスレティック戦だった。 0-0の後半途中に出場すると、終盤にペナルティーエリア内でベテランのDFユーリ・ベルチチェ相手に1対1を仕掛け、PKを獲得。アブドン・プラッツがそのチャンスを外したため、残念ながらスペインでのプロキャリア初勝利とはならなかったが、ホームスタジアムで才能の片鱗を見せつけた日本人に、サポーターは瞬く間にハートを鷲掴みにされた。百戦錬磨の左サイドバックを苦しめたこの試合は、スペイン国内に久保の名を知らしめるものとなった。 それ以降の活躍ぶりは皆が知るところだが、所属チームによってはレギュラー争いに苦労したり、保守的な戦いを余儀なくされたことで、コンスタントに活躍できない時期もあった。それでも、細かく柔らかいタッチの緩急あるドリブルを武器に、レアル・マドリードやFCバルセロナなどの強豪を含めて、さまざまなDFを苦しめてきた。 その能力の高さは、アトレティコ・マドリードをUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝に2回導いたディエゴ・シメオネ監督が「久保と対峙するのは簡単ではない」と口にし、毎回何らかの対策を施していることでも示されている。 とはいえ、ドリブル力を遺憾なく発揮できるようになったのは、攻撃面で優位に立てるようになったソシエダ加入以降だろう。 イマノル・アルグアシル監督の信頼を即座に勝ち取り、2トップの一角や右ウイングでプレーした2022-23シーズン、ラ・リーガでドリブル数99回、成功数49回でともに19位という結果を残した。 その成功率は50%。この年2部門(ドリブル数265回、成功数112回)でラ・リーガトップだったヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)の成功率が42%であることを考えると、十分な成績と言える。 右ウイングに固定された昨季は、序盤にキャリア最高のパフォーマンスを発揮したことで要注意人物と認識され、時に暴力まがいの激しいファウルで止められることもあった。それでも久保は怯むことなく、勇猛果敢に相手DFと対峙し続けた。結果、ドリブル数99回で18位、成功数55回で11位と前年の成績を超えている。 成功率は56%で、ジローナで2部門トップ(ドリブル数194回、成功数104回)のサヴィーニョ(現マンチェスター・シティー)の54%を上回り、久保のアイデンティティーが圧倒的なドリブル力であることを改めて証明するものとなった。