滋賀医大生・性暴力事件、大阪高裁はなぜ「無罪」と判断? 【判決詳報】
●争点3 被害者X女の同意はあったか?
最後に、被害者とされるX女の性的行為への同意の有無を裁判所がどう判断したかを確認しよう。 1審の大津地裁はまず、「強制性交等罪の成立が妨げられるような同意とは、強制性交等に応じるか否かについて、自由な意思決定に基づき真に同意することを要すると解されるところ、いつ誰とどのような態様で性交等をするかという性的自己決定権を行使できる状態にない場合には、真に同意していたとはいえない」という枠組みを提示した。 そして、X女やY女の方から積極的に性的な話題を持ち出したり、A男らとの身体接触を図ったりしたことがなく、X女に性交等をする意思がなかったにも関わらず、「A男方に入ってから、容易に逃げられない状況でA男に口腔性交を求められ、冗談と思っていたことが現実化しそうな状況になり、驚愕や動揺により、あるいは、抵抗すればより強度の性被害にあうかもしれないなどといった心情に陥った」「性被害にあった者は、少しでも早く加害行為から逃れるために、自ら加害者の欲求を満たすような行為に出る等の迎合的な態度をとったり、従順な振る舞いに及んだりすることがある」と指摘。 それぞれの性的行為について、「X女は同意していなかったものと推認できる」「真に同意していたとはおよそ考え難い」「同意していなかったのは明らか」と判断した。 これに対して、大阪高裁は、買い出しを終えてA男方に合流したY女に、X女がA男と口腔性交したことに関して伝えようとした様子が全くないことなどを挙げ、それぞれの性的行為について「X女が同意の上でした疑いを払拭できない」と認定した。 以上のような考え方に基づいて、大阪高裁は逆転無罪の判決を導いたとみられる。