荻原博子「〈ワンランク上〉と〈自分へのご褒美〉を捨てるとラクになれる」紫苑「〈ご褒美〉は目の前の生活がストレスなく楽しければ必要ない」
紫苑 私の通っている商店街のお店は、スーパーより新鮮で安い野菜や魚が多いんです。だから、近所のお店で必要な分だけ買うスタイルが合っているような気がします。 荻原 年金生活者になったら、お財布に合った暮らしをするのが基本です。バブル経験者は、「ワンランク上」と「自分へのご褒美」という言葉に弱い(笑)。この2つを捨てるとラクになれるし、節約生活も楽しめるはずです。 紫苑 懐かしい言葉ですね(笑)。私もそうだったからよくわかるのですが、「ご褒美」は目の前の生活が楽しくないから必要になるんですよね。今は不要な見栄を張ってストレスが溜まることがないので、ご褒美は必要ありません。 荻原 そもそも、女性は年齢や状況に合わせて考え方を変える能力に長けていると思います。以前、若い独身女性向けの雑誌で連載していたことがあったのですが、当時の読者は、月のお給料をすべて自分のお小遣いとして使うような人たちでした。 でも数年後、今度は育児雑誌で連載の依頼があって。母親になったかつての女性読者たちが、「せめて月に3000円でいいから、自分のお小遣いがあればなあ」なんてつぶやいているんですよ。 紫苑 結婚、出産を経て生活が180度変わり、考え方も変えざるをえなくなったわけですね。 荻原 でも、だからと言って決して不幸だと思っているわけではないんです。全身ブランド物で固めていた女性が、子どもをママチャリに乗せて、一円でも安いスーパーに買い物に行く生活になっても、それはそれで楽しんでいる。女性にはそういうタフさがあるんです。 紫苑 私は見栄やプライドをなかなか捨てられない時期がありました。本当は誰もなんとも思わないのに。こだわっているのは実は自分だけだった、ということが、節約生活でよくわかりました。
◆「1000万円あげる」と言われたら 荻原 これまで3年以上節約生活を続けてこられて、「良かった」と感じることはありますか? 紫苑 以前の私は自分に自信がなくて、こんなふうに人前で意見を言うなんてできませんでした。でも、とても無理だと思っていた月5万円の収入でも、楽しい生活が送れるようになったことで、自信がついたといいますか。 荻原 今の紫苑さんは、自分の生活をきちんとコントロールできたことで、自己肯定感が高まったんですね。 紫苑 きちんとできているかどうかはわかりませんが、無用な物欲から解放された今の暮らしが心地いいんです。だから、たとえば今「1000万円あげる」と言われても遠慮します(笑)。「そんな大金、何に使うの?」って。 荻原 お金で手に入れた幸せは、お金がなくなったらおしまい。でも、「お金がなくても幸せ」は無限大なんですね。 紫苑 なによりも、この先の不安がなくなったことが一番うれしい。月5万円で楽しく暮らしていけるんだから、何歳まで生きてもまったく不安はない! と。(笑) 荻原 どれだけ高収入であっても、お金の問題って、心配しだすとキリがないんですよ。今の生活を心から楽しんでいらっしゃる紫苑さんのお話、とても勉強になりました。 紫苑 こちらこそ! 数年前までお金のことなんてこれっぽっちも考えていなかった私が、こうして荻原先生とお話しすることができたのも、節約生活のおかげです。 (構成=内山靖子、撮影=大河内 禎)
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