【毎日書評】やる気が長続きしない…問題の解決策は「セルフ・コンパッション」にあり
① 放っておいても、やる気やモチベーションが湧いてこない ② やらなきゃやらなきゃと思いつつ、取りかかれずモヤモヤ ③ 思うようにやれていない、進んでいないと罪悪感を感じたり、自分を責めて落ち込んだり ④ その結果、さらにやる気やモチベーションが下がる (「はじめに」より) こんな状態に悩まされている方は、決して少なくないはず。そこでご紹介したいのが、『モチベーションの問題地図 ~「で、どう整える?」ため息だらけ、低空飛行のみんなのやる気』(関屋裕希 著、技術評論社)です。 著者は、上記のような悪循環から抜け出すためには「自分を責めるのではなく、自分にやさしく、行動科学にのっとって冷静に、自分のやる気やモチベーションのために、仕事の仕方や働き方、そして働く環境を設計する」ことが大切だと説いています。 臨床心理士/公認心理師/キャリアコンサルタントとして、「働く人のポジティブな心理状態(ワーク・エンゲイジメント)をいかにつくり出すか」「やる気やモチベーションの高さと健康をいかに両立させるか」という観点から研究を続け、さまざまな組織での実践をおこなってきたという人物。 本書では、モチベーションややる気にまつわる問題を地図にして、それぞれに解決策を提案しています。解決策は、心理学や行動科学にのっとったもの、かつ、手軽に取り入れられるカタチで紹介しています。(「はじめに」より) きょうは5丁目「やる気が長続きしない」のなかから、「セルフ・コンパッション」についてのトピックを抜き出してみることにしましょう。
エネルギーが湧いてくる「セルフ・コンパッション」
目標を達成しようとしているとき、仕事で難しい局面に立たされているとき、くじけそうなとき、失敗をしたときなどにおいて、自分にどんな声をかけているでしょうか? もしかしたら、「もっとがんばれ!」「こんなことじゃだめだ」というように自分を責め、無理やりがんばらせているかもしれません。まるで、自分で自分の鬼コーチ役を引き受けているかのように。 このような「アメとムチ」の枠組みから抜け出すのに効果があるのが、心理学で「セルフ・コンパッション」と呼ばれる自分とのつきあい方です。セルフ・コンパッションでは次のような声かけになります。 「うまくいかなくて、苦しいね」 「失敗して、落ち込むよね」 「ここまで、よくがんばってきたね」 (169ページより) 「コンパッション」は、「慈悲・思いやり」という意味。つまりセルフ・コンパッションは、自分に思いやりの気持ちを向けるアプローチだということです。自分に対して厳しく批判的な態度をとるのではなく、やさしく思いやりのある態度でつきあっていくわけです。 「自分にやさしくしたら、がんばれなくなりそう」と思われるかもしれませんが、それはカウンセリングでセルフ・コンパッションのアプローチを提案した際にもよく返ってくる反応なのだとか。 私たちは、「なんで、できないんだ!」と責め立てられるより、コンパッションの気持ちで接してもらったときのほうが、うまくいかないことや自分の失敗を、より近くから見る勇気が湧いて、次に活かすことができるのです。(171ページより) 親しい人に接するときと同じように、自分に思いやりの気持ちを向ける。そうすることで、次に向かう勇気を引き出すことができるわけです。 そればかりか、「自分を責め、鞭打ってがんばらせる」という自分とのつきあい方から脱却できれば、自分以外の誰かのことをせめてがんばらせようとすることもなくなるかもしれません。(168ページより)