伝説のモデル・山口小夜子の美容論「日本人は目が細いのが欠点と思いがちだけれど、それは欠点ではなく特徴だと思うのです」【前編】
欠点を隠すのではなく、特徴や個性を生かすメイクを
私はよく、素顔を絶対に見せない、といわれますが、家ではもちろんノーメイクです。ただ、たとえ家から仕事場に向かう途中でも、モデルを職業としている以上、その意識は必要ではないかと思っています。ノーメイクという無防備なままで歩いたら、気持ちだって緩むし、するとどうしても姿勢や動作にも張りがなくなります。いつでも自分の一挙手一投足に気を配っていてこそ、仕事の場で思うままに動くことができるのではないでしょうか。とはいっても、もちろん仕事のときとふだんのときとはメイクアップも違います。 私のアイメイクアップは、日本人である私の目の長所を生かすように工夫したもの、細い切れ長の目をチャーミングに見せるようにしたものです。具体的にいうと、ファンデーションでベースをつくった後、目の上からこめかみにかけて明るいばら色を入れます。それから茶の濃淡のシャドーを目にそって切れ長に入れ、水で溶くタイプのアイラインを筆で描きます。 これが私のふだんのメイクアップ、いちばん私らしい方法です。仕事のときはもっと強くしますし、メイクアップアーチストによってもいろいろ変わります。 日本人は目が細いのが欠点と思いがちだけれど、それは欠点ではなく特徴だと思うのです。つけまつ毛をたくさんつけて西洋人風にするのでなく、その目に合わせてアイラインを引くほうがスッとした切れ長の目の個性が生かせると思います。頰紅にしても、白人は顔が細く頰が薄いから頰に入れますが、日本人は頰骨が高く頰がふっくらしているので、同じところに入れてもただの線にしかなりません。それよりも頰骨の上にブラッシュしたほうがいいのではないかしらとも思いました。日本人にいちばん合うメイクアップは、結局、日本人の昔からの化粧法ではないかということです。(小夜子の魅力学 1983年3月13日)
年齢の出る手こそ、日々の手入れで違ってくる
手にはその人の年齢や生活がにじみ出るといわれます。年をとるにつれて肉体が少しずつ衰えることは自然のなりゆきですし、よく働いた手はそれなりに美しいのですが、それでも、日ごろ手を大事にしているのといないのとでは、ずいぶん違うと思います。形の良し悪しにかかわらず、女でも男でも手入れのゆきとどいた清潔な手は、とても感じのよいものです。 私はといえば、忙しさにかまけてそれほど気をつけているほうではないのですが、ハンドクリームをつけたり、ビタミンEのオイルをすり込んだり、寝るときにガーゼの手袋をはめたりくらいはしています。これは外国のスーパーで買ったのですが、コットンでできた就寝用の手袋です。日本では画材屋さんなどに売っているようです。 ときたまゆっくりできる時間があるときなど、クリームをつけてマッサージをすることもあります。まず手にたっぷりとマッサージクリームをつけ、指を一本ずつらせん状に根元から先に向けてマッサージします。次に指の先を持ち一本ずつゆっくり回して軽くひっぱり、それから指をそらせます。(小夜子の魅力学 1983年3月13日) 撮影:横須賀功光