球状星団での中間質量ブラックホールの誕生をスパコンで予測
■どうやって巨大ブラックホールは作られるのか?
我々の住む太陽系が存在する銀河系(天の川銀河)を含め、数多くの銀河では中心部分に「超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)」が見つかっており、大きなものではその質量は太陽の約100億倍にも及びます。しかし、本来ブラックホールは恒星の超新星爆発の残骸として生まれるので、誕生時の質量は超新星爆発前の恒星の質量を超えることはありません。つまり、超大質量ブラックホールは最初から超大質量だったわけではなく、もっと小さい状態から成長していったはずです。 ブラックホールとは? 光さえも脱出できない超重力の天体を解説 ブラックホールは周囲の物質を吸い込む、もしくは他のブラックホールと合体することで成長します。なので、ガスや星、ブラックホールなどが密集した場所の方が成長しやすいだろうと予想されます。こうした高密度環境の例としては、形成期の星団や銀河中心などが考えられます。 とはいえ、高密度環境下であったとしても、さすがに超大質量ブラックホールにまでいきなり成長させることは容易ではありません。ブラックホールは質量が小さいとその重力が優勢になる範囲も狭くなるので、通常の恒星から小さく生まれたブラックホールは成長が遅く、いつまで経っても大きくなれないままだろうと考えられています。 つまり、大質量のブラックホールになるほどの急激な成長を遂げるには、そもそも生まれた瞬間からある程度大きな質量を持っていなくてはなりません。要するに、形成期の星団の中で、非常に大きな質量の恒星を作ることができれば、それが超新星爆発を起こし、将来的に超大質量ブラックホールに成長し得るくらいの大きなブラックホールができる可能性があります。
■コンピュータシミュレーションで大質量な恒星の誕生を再現
科学雑誌Scienceで新たに発表された研究において、東京大学の藤井通子准教授らはスーパーコンピュータを用いて、ビッグバン直後の宇宙を想定した「球状星団」の形成過程を再現するシミュレーションを実行しました。その結果では、形成期の球状星団の中心部分は極めて多くの星が密集した環境にあり、そこでは星同士が頻繁にぶつかり合って合体する「暴走的衝突」が発生し、最大で太陽の1万倍もの質量を持つ恒星が生まれました。