「優生思想ぶっこわせ!」 旧優生保護法「違憲」判決受け障害者ら院内集会
旧優生保護法で障害者に強制した不妊手術は憲法違反と断じ、国に損害賠償を命じた7月3日の最高裁判決から4カ月、被害からの回復に道を開いた勝訴をどう生かし、差別根絶につなげるかを考える集会が11月5日、東京・永田町の参議院議員会館で開かれた。 「あなたのなかの優生思想をぶっこわせ!」と題し、重度障害者であっても地域で当たり前に暮らせるよう取り組む「全国公的介護保障要求者組合」が主催した。 冒頭、三井絹子委員長は自身の体験から語り起こした。入所施設で何度も子宮摘出を勧められ、1970年代半ば、結婚してアパート暮らしを始めると「なぜ障害者がこんなところにいるの?」「なぜ子どもを生むの?」と疑問を次々投げかけられた。「子どもを生むのに理由などない。なのにそれが許せない人がたくさんいた」。 夜中に電話が鳴り「妊娠? 障害者が何を考えているんだ。『かたわ』の子が生まれる」と差別発言を吐かれ、ある日は乳母車が壊されていた。社会の構造は今も変わっていないという三井委員長は「障害者は養護学校(特別支援学校)に通うものとされ、健常者とは別の生き物という意識を皆が持つようになった。生きる価値に優劣をつける優生思想は分離の歴史に根ざしており、両者が分けられずに共に生きていく環境をつくることが必要だ」と訴えた。 「不良な子孫の出生を防止する」という旧優生保護法こそ、障害者の命が存在してはならないものと国家が定めた人権侵害法にほかならない。48年から96年までに不妊手術は約2万5000人、人工妊娠中絶は約5万9000人を数え、判明しているだけで被害者は約8万4000人に上る。 7月の最高裁判決は「憲法13条、14条に違反する規定に基づき、48年もの長期間にわたり国家の政策として障害者を差別し、重大な犠牲を求める施策を実施してきた」と指弾。「国を免責するのは著しく正義・公平に反する」として、不法行為から20年の経過で賠償請求権が消滅する「除斥期間」を適用しなかった。 原告の一人、北三郎さん(仮名、81歳)は「判決は障害者は人間として価値がないわけではないと示した。優生思想がなくなり二度と苦しまない生活を送りたい」と語った。14歳で、施設職員に連れられ何も知らされないまま断種させられた。「岸田(文雄)首相(当時)や小泉(龍司)法相(当時)に謝られたが体は元に戻らない」とも述べ、取り返しのつかない被害の重大さを伝えることも忘れなかった。