「ONE PIECE ONLY」(PLAY! MUSEUM)レポート。誰も⾒たことがないワンピースがここにある
メイキングを伝授する「宝箱」
壁面のマンガを見て、ふっと思う。このコミックスがどのように作られているのか。そうした制作の裏側を教えてくれるのは会場のあらゆるところにある19個の宝箱。覗けば、そこには「週刊少年ジャンプ」の黄色い入稿袋、製版フィルム、印刷見本、あるいはオフセット印刷刷版などが隠れている。『ONE PIECE』の表紙が7色で印刷されていること、2面付けして印刷されていることなど、ファンでも知らないような秘密がたくさん隠れている。 それぞれの宝箱のふたにあるのは写真家・本城直季による、印刷会社や集英社の空撮写真だ。ここからもマクロとミクロの視点で『ONE PIECE』に着目している姿勢を読み取ることができる。 渦巻きの中心に『ONE PIECE』作者・尾田栄一郎の机の写真と1000話の下書きも展示されている。ひとりの漫画家の机から全世界へと物語をつなぐ職人の技こそが宝であると思わせる演出だ。制作工程を表している宝箱だが、じつは時系列逆に並べられている。展覧会の中心からから辿っていくと、コミックスの誕生にたどり着く仕組みになっているのだ。
受け継がれていくべきアートとしてのマンガ
「マンガを、受け継がれていくべきアートに」というビジョンのもと、2021年にスタートした集英社マンガアートヘリテージ。本展ではリアルな色の表現と長期収蔵にも耐えうる品質を両立させた「REAL COLOR COLLECTION」シリーズを見ることができる。会期中に100点のアートプリント(展示替えあり)、制作に使用された金属刷板の現物や制作風景を記録したドキュメンタリー映像が展示される。
迫力のファクトリーを大画面で
さらに集英社マンガアートヘリテージが「週刊少年ジャンプ」やコミックスの製作現場を2024年に撮影。本展では8Kのハイスピードカメラとアナモルフィックレンズを用い収録した臨場感あふれる映像をインスタレーションとして展示する。映画館風の空間で印刷機のなかに入り込んでいくような体験もできるのだ。
「黄金の部屋」に名を残す
多くの読者から愛され続けている『ONE PIECE』は読者コーナーを通してファンとの関係を大切にしてきた。本展では、自分の絵を描ける参加型のコーナーが設置されている。コピックのカラーマーカーで色をつければ、漫画家になった気分も味わえるかもしれない。完成した絵を「黄金の部屋」で飾ることもできれば、尾田栄一郎の目にしか届かない箱に入れることもできる。 展覧会の終盤には海賊王になりきれるフォトスポットも用意されているので、躍動感のある写真も撮れるのだ。本展で誰も見たことがない「ONLY ONE」の『ONE PIECE』を探してみてはいかが。
Alena Heiß