【新築マンション購入者の年収】東京よりも名古屋の購入者の平均年収が高いという意外な事実、一体なぜなのか？
新築マンション価格上昇が止まらないため、購入者の年収も年々高くなっている。注目しておきたいのが、三大都市圏によって購入者の平均年収が異なる点だ。意外かもしれないが、首都圏より中部圏の方が世帯年収が高くなっている。一体なぜなのか。住宅ジャーナリストの山下和之氏がレポートする。（JBpress編集部） 【表】都市圏別の新築マンション購入価格や世帯年収など（フラット35利用） ■ 新築マンション購入者の年収は首都圏が圧倒的に高いとは限らない 新築マンションの平均価格はどこまで上がっているのか。東京カンテイが三大都市圏（首都圏・近畿圏・中部圏）で調べたデータによると、【図表1】にあるように近年は首都圏の高騰が著しく、2023年には8094万円となっている。 それに対して、近畿圏は4965万円で中部圏は3874万円。近畿圏は首都圏の約61％で、中部圏は約48％なので、中部圏なら首都圏の半分以下の価格で手に入る計算だ。 これだけの価格差があるのだから、購入する人たちの年収を見ても、首都圏が圧倒的に高いのではないかと思いがちだが、実際はそうではない。意外なことに、新築マンション購入者の世帯年収は首都圏や近畿圏より中部圏の方が高いというデータがある。平均価格には倍以上の格差があるにもかかわらずだ。 【図表2】をご覧いただきたい。これは、住宅金融支援機構が民間機関と提携して実施している住宅ローン「フラット35（全期間固定金利型住宅ローン）」を利用してマンションを買った人たちの主要な指標を都市圏別に整理したものだ。 世帯年収を見ると、全国平均が955.4万円に対して、首都圏は944.4万円で、近畿圏は少し高い974.8万円、中部圏はさらに高い993.8万円となっている。ほとんど1000万円に手が届くかという年収であり、1000万円近い年収がないと簡単には新築マンションが手に入らない現実があると言っていいだろう。
■ 戸建て志向の中部圏で新築マンションに人気が集まっている 次に、フラット35を利用して新築マンションを購入した人の平均価格を見ると、中部圏は首都圏より1000万円以上安くなっているのにもかかわらず、世帯年収は中部圏の方が50万円近く高いという不思議な現象が発生しているのだ。 その結果、年収倍率の平均は首都圏が7.7倍に対して、中部圏は6.8倍と、かなりゆとりを持って購入できていることになる。ちなみに、この場合の年収倍率は一人ずつ年収倍率を算出し、その平均値をとっているので、購入価額を世帯年収で割った数値にはならない。 もともと、中部圏は首都圏に比べて戸建て住宅が比較的リーズナブルな価格帯で手に入ることもあって、戸建て指向が強い土地柄と言われている。それも首都圏や近畿圏に比べると、敷地面積の広い戸建て住宅が多く分譲されていて、マイホーム購入適齢世代といわれる30代、40代の会社員に広く支持されている。 それに対して、新築マンションの購入を考える人たちは、住宅の広さより利便性を重視する人たちが多い。 実際に専有面積を見ると、首都圏は63.6m2 に対して、近畿圏は66.9m2 、中部圏は65.9m2 と住宅の広さにはほとんど差がなく、むしろ近畿圏より中部圏のほうが狭くなっている。多少狭くてもいいので、駅からの徒歩時間の長い傾向の戸建て住宅より、駅近物件が中心の新築マンションを指向する人たちが少なくない。 特に、高額所得者で住宅の資産価値を重視する人たちにその傾向が強いと言われている。それには中部圏、中でも名古屋市ならではの事情がある。 というのも、近年は、リニア中央新幹線の駅が設置される名古屋駅周辺の再開発が盛んになっており、利便性の高いエリアで大規模マンションの供給が増えているのだ。 従来の名古屋市の相場より高い価格帯で分譲される物件が増えているのだが、リニアの開業見込みもあり、長期的な視点から資産価値の上昇が期待できると、高額所得者に支持されている。そのため、平均世帯年収が首都圏より高いという逆転現象が発生しているわけだ。
