「完全週休3日制」は職場をどう変えた? 伊予鉄流、働き方改革の進め方
生成AIで業務効率化
同社は、働き方改革と並行して、対話型AI「ChatGPT」などを用いた業務効率化も進めている。社員はアイデア出しなどでChatGPTを利用し、議論の助けとなるヒントを得ている。広報チームは、Webサイトに掲載するイラストをChatGPTで自動生成するなどし、業務負担を減らしている。 伊予鉄グループは、1887年に「伊予鉄道会社」として創立。民営鉄道としては国内で2番目に古い歴史を持つ。「歴史が古い分、よく言えば安全第一。クリエイティブな業務でも保守的になりがち」と中川さん。そんな風土を変化していこうと、業務自動化ツール「RPA」を導入するなど、業務改革にも注力する。
働き方改革の今後は?
完全週休3日制の導入で、働き方改革を推し進める伊予鉄グループ。今後はどのような展望を描いているのか。中川さんは、今後進めたいこととして「リモートワーク」を挙げる。 現状も限定的なリモートワークは実施しており、出張先や自宅でも仕事をすることができる。 社員のリモートワークのニーズ自体、現状は必ずしも高いわけではない。会社の近くに住む社員もいる。都心のように、満員電車にすし詰めになるような通勤環境ではない。 一方で、今後、労働力不足が進行した際、リモートワーク環境が整備できているかどうかで、企業が取れる選択肢の数は大きく変わる。リモート環境があれば、究極的には地方に住んでいない人にも遠隔で業務を担ってもらうことができる。「先々を見据えた環境整備は必要」だと中川さんは力を込める。 伊予鉄グループでは、傘下の伊予鉄バスと伊予鉄道でも、2023年末までに運転士の年間休日を約8%増やしたほか、週休3日を選択できる新たなシフト勤務者枠を新設。多様な働き方ができる環境を整備し、人材獲得に乗り出している。 働き方改革は、社員の働き方の自由度を高め、ワークライフバランスの実現を後押しすると同時に、企業にとっても人材の確保と定着、持続的な成長を遂げるために必要な土台となる。多くの企業が人材不足に直面する中、伊予鉄グループの取り組みは、さまざまな示唆を与えてくれそうだ。
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