「完全週休3日制」は職場をどう変えた? 伊予鉄流、働き方改革の進め方
企業自身も価値観をアップデート
そしてもう一つ、人材の確保という観点も、完全週休3日制を導入した重要な狙いだ。 「働き方改革に取り組まなければ優秀な人材を得られず、将来、事業存続が難しくなるかもしれないという危機感があった」と中川さんは話す。「古い考え方で言えば、会社としては当然、社員にたくさん働いてもらう方がいい。一方で世の中は、時間の使い方のメリハリや、合理性を意識する方向へと変化している」 同社は完全週休3日制の導入に先立ち、2020年10月から、社員が働く時間帯を柔軟に決められる「フレックスタイム制」を導入するなど、積極的な改革を進めてきた。これらは、世の中の変化に合わせて企業自身が価値観をアップデートし、将来の事業継続に備えるための取り組みだといえる。
「制度上の矛盾」も どう対応?
2023年10月からスタートした「完全週休3日制」。当初は定着するまでに苦労もあったという。 「働き方が大きく変わることになったので、時間の使い方に慣れるのに時間がかかる社員もいた」(中川さん) 同社が導入した週休3日制度は、総労働時間や給与水準は変えない設計のため、稼働日の労働時間は従来から2時間程度伸びた。1日あたり平均約10時間働くことになる。「1日の労働時間が伸びると業務効率が落ちることもある。そのあたりのコントロールは当初、難しかった」 導入から半年が経過し、こうした課題も次第に解消されたという。 課題はほかにもある。水曜を一斉休日とすることで、週休3日が返って重荷になるような「制度上の矛盾」が生じるケースだ。例えば、ある部署が繁忙期に入った場合。4日間の稼働日で1日あたり15時間も働かなければならないような事態となった際、本当に週3日休むことが良いと言えるのか――。 中川さんはこうしたケースを念頭に「水曜休日を絶対として締め付けすぎるのは返って自由度が下がる」と話す。このような場合は、休日出勤を許可するなど、柔軟な対応を取っているという。 ほかにも、子育て中の社員の中には「10時間労働×4日間」よりも「8時間労働×5日間」の方が、バランスがいいケースもあるという。こうしたケースでも同社は例外的に、休日出勤を認めているという。 例外をどこまで認めるか、線引きは容易ではない。例外の許容範囲を決めてほしい、と社員から要望が挙がることもあるという。中川さんは「ルールとして明文化するのは、対応としては強すぎる」と話す。必要な情報を社内で共有し、柔軟な運用を進めていく方針だ。