はやぶさ2最後のミッション JAXA会見(全文2)今回の運用は世界初の事例
ローバ2の分離方向
永岡:ローバ2の分離方向に関しまして永岡よりご説明させていただきます。こちら画面に映ってます右上のものがローバ2が格納された、探査機に収納された状態の側面を切った断面図になっております。実際には下側の図にございますようにカバーが分離されて、その後、中のローバ2が分離されるという、そういった構造となっております。分離方向の結果ですけれども、ローバ2分離方向のノミナルの設計値は水平から下斜め5度以下の方向ということが制約としてございます。これは探査機のソーラーパネルとの緩衝、ぶつかったりといったことを確実に防ぐということから下向きに打ち出すということになっております。今しがた吉田先生のほうから画像解析の結果についてご説明ありましたけれども、画像解析に基づきますとローバ2の実際の分離方向といったものは水平から下斜めの約30度ぐらいの方向であったということが分かっております。 これらノミナル設計値との乖離というのが確認されたわけですけれども、その誤差要因として考えられることと、そこから得られる将来への知見ということを下にまとめさせていただいております。まず最初に誤差要因といたしまして打ち上げ時の誤開放と書いてますけれども、最終的なフライトモデルの開発の段階で重量の増加といったものに伴いまして、打ち上げの振動、衝撃に耐えられるような構造とするという必要がありましたので、このカバーを締結しているのが、ねじのトルクでカバーの締め付ける力を変更させてたんですけれども、フライトモデルではそれをより安全側に設計をして実際、搭載したという経緯があります。それに伴いまして、ここで用いていた炭素繊維の強化プラスチックといったものは軽量で非常に強いんですけれども、その一方で変形しやすいという特徴がございますので、このねじトルクの増加に伴って変形のひずみが生じて、結果的には下向きに押し出す力が大きくなったのではないかというふうに考えております。