はやぶさ2最後のミッション JAXA会見(全文2)今回の運用は世界初の事例
着陸を阻害しないと判断
ただし、これらの下向きに打ち出されるのではないかといったことは、打ち上げ前の段階においてもわれわれ想定された、構造上、想定された特性ではありましたけれども、当初の目的としましてはローバ2は着実に小惑星に降り立つというのが第一の目標で掲げておりましたので、そういった観点では下側に、たとえ何度か下側の方向に打ち出されたとしても確実に小惑星への着陸といったものは阻害しないというふうに判断いたしておりました。 さらに今回の経験を踏まえまして将来への知見としては、今回のように放出速度ですとか、方向ですとか速度といったものが、今回、周回運用という形にミッションの流れを切り替えたということがございましたので、そういった精度を要求するようなものを設計するということが分かっていた場合には、やはり締結トルクに限らないんですけれども、さまざまな構造的な制約を受けない分離機構といったものを工夫していく必要があるといったことが考えられます。
温度に反応してホッピング運動をするデバイスも搭載
吉田:それではまた私に戻りますけれども、今回のローバ2の運用に関しまして以前から、当初の内部に搭載されている制御系の不具合によってホッピング運動ですとかカメラの撮像は残念ながらできなくなっていますということを申し上げておりましたが、その中でも山形大学が開発をしました環境駆動型移動機構というものが搭載されておりまして、これは電気エネルギーとか制御系を、制御ロジックを一切使わずに周りの環境の温度に反応してホッピング運動をするというデバイスが搭載されてますので、この機会に若干補足させていただきます。 具体的な、こういう、ちょっと、これでも分かりにくいかと思うんですけども、ばね的なものが、重りが付いたばねのようなものが中に入ってるということでございます。このばねが実は2段階、2つ、2種類ありまして、1つは40度を超えるとぼんとはじけて動作をすると。また0度以下に戻ると元の姿勢に戻ると。これが温度変化だけによって繰り返されるというものと、もう1つ、90度でぼんとはじけて、40度になると戻ると。こういった運動をする、2つのものがある意味、冗長系を構成するように入っておりまして、それも、しかもこの2つが直交する方向に入ってますので、どちらかが反応すればこれが跳躍しやすい向きで、これはローバ2の断面図を描いておりますけれども、この向きでホップする場合、あるいは90度、直交する向きでホップしやすい場合と、それぞれ数十センチではありますけども自律的に弾むという機構が搭載してございますので、これはちょっと現時点では確認のしようはほとんどないんですけれども、こういったものがリュウグウ表面で動作をしている可能性はあるのかなということはちょっとここでご紹介させていただきたいと思います。 【書き起こし】はやぶさ2最後のミッション JAXA会見 全文3に続く