表面全体がマグマで覆われた惑星の候補「TOI-6713.01」を発見
ある天体の近くを別の天体が公転している場合、潮汐力によって内部が加熱されて地質活動が活発になることがあります。その一例が木星の衛星「イオ」です。イオはほぼ常に複数の火山が噴火しているほど地質活動が活発です。 今日の宇宙画像 カリフォルニア大学リバーサイド校のStephen R. Kane氏などの研究チームは、地球から約66光年離れた恒星「HD 104067」について、NASA(アメリカ航空宇宙局)が打ち上げた宇宙望遠鏡「TESS」による観測データを分析しました。その結果、これまで見逃されていた3個目の惑星の候補を発見しました。 今回見つかった惑星候補「TOI-6713.01」は、他の惑星からの潮汐力によって表面温度が最大約2400℃に加熱され、全体がマグマで覆われているかもしれません。近くで見れば、まるで『スター・ウォーズ』に登場する惑星「ムスタファー」のように見えるでしょう。それだけでなく、近い将来、TOI-6713.01のマグマからの熱放射を観測できる可能性もあります。
■「潮汐力」は天体の内部加熱の原動力
地球の海は、衛星である月の重力によって周期的に潮の満ち引きが発生します。このように、他の天体の重力の影響で副次的に発生する力を「潮汐力」と呼びます。潮の満ち引きと比べると目立ちませんが潮汐力は岩石や氷のような硬い固体にも発生し、天体全体がゴムボールのように変形し、熱を発生させます。 潮汐力は天体同士の距離が激しく変化するほど強くなる傾向にあるため、太陽系には地球よりも激しい潮汐力を受けている天体が複数あります。典型的な例は木星のガリレオ衛星です。その1つの「エウロパ」は潮汐力によって内部の氷が融け、地下に広大な海が存在するのではないかと考えられています。 別の衛星「イオ」はもっと極端な影響を受けています。潮汐力による加熱が激しすぎるため、イオの表面には最高で1300℃にも達する熱い火山が無数にあります。熱い火山が噴火しているのが観測されたのは、地球以外ではイオが唯一です(※1)。潮汐力による加熱によって、イオの表面ではほぼ常に複数の火山が噴火しています。 ※1…金星では2023年に、現在でも地質活動が続いている可能性が高い証拠が見つかっているものの、噴火は観測されていません。