大谷やダル支えたコーチ「データと野球」語る…150キロ以上の投球、10年で3・5倍
――ボールの回転数などを計測できる機器を活用した練習が広まっている状況をどう見ているか。
スポーツ科学に正解なし
「学生時代の恩師に『正解なしのスポーツ科学』と教わってきた。中でも野球は投手と打者が全く異なる運動で勝負することがゲームの起点となるという特殊性がある。その分、色んな要素が入りやすく、カオス(無秩序)にもなりやすい。データ分析による情報が野球にどれだけ影響を及ぼせるか、すごく注目される時代になった。トレーニングや技術分析も同様で、情報量は10年前と全く違う。取捨選択の力が選手にも、コーチやトレーナーなど、パフォーマンスに関わる人にも大事になるのではないか」
「選手は1ミリ単位、1000分の1秒単位で調整しようとしているわけではない。科学的にそういう分析結果が出ても、動きの調整は人間固有の感覚の中でやること。ほんの少しの違いなのに『もうちょっと』でうまくいかなければ『もっと』というふうに極めてアナログな調整を行う。サイエンスで証明できることとパフォーマンスとの間には、容易には因果関係を見極められないいくつもの要素がある。説明しきれないからこその面白さがスポーツにはあり、知の限界に挑み続けることが醍醐(だいご)味だと思う」
なかがき・せいいちろう 東京都出身。筑波大卒業後、米ユタ大院留学などを経て2004年、チーフトレーナーとして日本ハム入り。翌年入団したダルビッシュ有(現パドレス)らを支え、12年には米大リーグに挑戦したダルビッシュの専属トレーナーとして1年間サポート。13年に日本ハムに復帰し、この年入団した大谷翔平(現ドジャース)の投打での「二刀流」挑戦をトレーニング・技術面から支えた。17~18年はパドレスの部長職を務め、19年から6年間在籍したオリックスでは育成方針の設定のほか、ファームからの戦力供給を組織的に構築した。
「見える化」球速に貢献 150キロ以上大幅増
トレーニング技術が進化し、計測機器の普及による「見える化」が進むことで、投手の直球の平均球速が大幅に上がっている。