大谷やダル支えたコーチ「データと野球」語る…150キロ以上の投球、10年で3・5倍
[球景2024 投高打低]<下>
プロ野球では近年、科学的なアプローチによる投手の進化が著しい。今季も一層、顕著となった「投高打低」の背景と、現状打破を試みる打者側の取り組みを追った。
オリックスの3連覇に貢献
トレーナー、コーチとして、日米球界を20年以上渡り歩き、卓越した育成手腕を発揮した前オリックス巡回ヘッドコーチの中垣征一郎氏(54)に投手の球速アップの背景や、データ科学が普及する中で選手や指導者らはどう向き合っていくべきか聞いた。
――2021年から4年間、巡回ヘッドコーチを務め、リーグ3連覇にも貢献した。21年入団の宇田川らの潜在能力を引き出すために意識したことは。
「自分は陸上競技出身で違和感を感じる者も少なくなかったと思うが、選手のパフォーマンスやチーム力をどう向上させるかを考えてきた。例えば、選手の出力を上げる場合、トレーニング科学や運動の原理原則を踏まえ、筋力をつけさせることと並行し、柔軟性の獲得、体の正しい動き方にも取り組ませた。投手、野手として必要な体力全般を上げ、投球や打撃の動作の中にまとめていく。練習メニューを含め、二軍監督やコーチらで出来る限り共有してやってきた」
日本最速は8年間変わらず
「日本のスポーツ界から世界で通用する選手がこれだけ出ているのは色んな指導者が選手の個性を重んじて育成し、選手の成長に向けて様々な手段から選択できる『自由』が選手に与えられるようになった点が大きい。同時に、才能ある選手でも、成長過程で取り組むべき『当たり前』があると考える。育成方針を考える上で、チームとしての『当たり前』をどこに設定するかは大切なことだ」
――投手の球速が上昇を続ける要因をどう考えるか。
「どのトレーニングだと成果が上がりやすいか、以前より明確になっているのかもしれない。日本人投手全体の能力も確実に上がっていると言える。ただ、大谷翔平選手が日本人最速を更新する165キロを出したのは(日本ハム時代の)8年前。平均値は上がる一方、最速は更新されないままという点も注目すべきだ。大谷選手はあの時点で身体的な要素が素晴らしく、高校やプロに進むに従って厳しいトレーニングをやりきった。出力の最大値において、それだけずぬけた存在であると言えるかもしれない」