「この勝利はル・マンの埋め合わせ」とシュワルツマン。クビサは序盤の空気圧トラブルに“自力で”対処/WEC第6戦オースティン
ロバート・シュワルツマンは、9月1日にサーキット・オブ・ジ・アメリカズで行われたWEC世界耐久選手権第6戦『ローンスター・ル・マン』でのAFコルセの勝利は、ル・マン24時間レースでの同チームのリタイアに対する「償い」であると述べた。また、チームメイトのロバート・クビサは、レース序盤に発生したタイヤ空気圧の問題でレースが複雑化し、後半の戦略に影響を及ぼしたことを明かした。 【写真】イーフェイ・イェとロバート・クビサを乗せ、ピットロードを逆走しパルクフェルメに向かうロバート・シュワルツマンの83号車フェラーリ499P シュワルツマンがクビサ、イーフェイ・イェとシェアした83号車フェラーリ499Pは、トヨタGAZOOレーシングの7号車GR010ハイブリッドがレース終盤にペナルティを受けた後、首位を取り戻して1.7秒差で優勝を遂げた。 黄色のカラーリングのこのフェラーリにとっては、シーズン開幕戦のカタールで残した4位がこれまでの最高成績であり、今回はオースティンで初勝利を手にしたことになる。 シュワルツマンは、最後に83号車のステアリングを握った。7号車トヨタのドライバーである小林可夢偉にリードを奪われ、その後ポジションを取り戻したが、日本人ドライバーからの勝利へのプレッシャーに立ち向かうという波乱に満ちた2スティントを経験した。 「僕がピットアウトしたとき、トヨタ(7号車)がアンダーカットを成功させて追い抜いて行ったんだ」とシュワルツマンは語った。 「彼らのペースは本当に速かったので、後ろにいたときは、とにかく接近しようとした。彼らは本当に良いペースで、本当に強かった」 「最初のスティントの途中のある時点で、トヨタに何か問題があるかもしれないという情報を得た。彼らが違反を犯したかもしれないといことだったが、僕らはペナルティがどうなるかは分からなかったので、(7号車に)とのギャップを詰め続けなければならなかった」 「彼らは本当に速く走っていたけど、僕はできるだけ彼らに近づくようベストを尽くしていた。彼らがドライブスルーとなる可能性が少しでもあれば、そのときは僕らの背後に回るだろうと分かっていたからね。だから、1周1周が重要だった」 「結局、彼らはペナルティを受けた。2スティント目では、僕が唯一目指したのは、クルマをコース上に維持することだだった。本当に大変だった。とくに最後の数周は、グリップを失い始めていた。クルマは運転するのがかなり難しく、ドリフトしていた」 「でも、最後に良い結果が出たのはうれしかった」 シュワルツマンは、今季第4戦のル・マン24時間で有望なポジションを走っていたにもかかわらず、ハイブリッドのトラブルによりリタイアするという挫折の後に得られたこの勝利の重要性を指摘する。 「ようやく勝利を収め、なんとか結果を持ち帰ることができた」とシュワルツマン。 「ル・マンの埋め合わせと言えると思う。あれはとても大きな損失だったし、とてもつらいいものだった。僕らは本当に勝利を渇望していたところだったし、ようやくここで勝利を手にすることができた」 ■クビサが「プッシュして上げた」タイヤ空気圧 一方、チームメイトのクビサはレース後、序盤のミスでタイヤの空気圧が規定の最低値を下回ったことで、83号車のタイヤ戦略が危うくなったと明かした。 彼の説明によると、これがレース序盤のリードチェンジへとつながったという。クビサは空気圧がそれ以上下がらないようにするために全力プッシュした結果、ポールポジションからスタートした51号車フェラーリのアントニオ・ジョビナッツィをパスしたというのだ。 この空気圧低下により、83号車は審査委員会からけん責処分を受けている。 「51号車がリードしていたので、タイヤをマネージメントして2番手に留まり、レース後半に向けて(安全策を)取ってエネルギーをできるだけ高く保ち、タイヤをできるだけ使わないようにしたかった」とクビサは語った。 「タイヤ空気圧が低すぎることに気づくまでに時間がかかりすぎたので、その時点では前に出てプッシュするしか解決策がなかった」 「それが、僕らに起こったことだ。ベストを尽くしたが、反応が少し遅すぎたため、なんとか空気圧を上げることができた。おそらく合法的なところまで空気圧を上げたが、シンプルに遅すぎた」 「こういうことは起こり得るので、僕らはタイヤを交換する必要があった。また、その状況でタイヤをそのままにしておくと、ゴムが減るリスクもあった。ゴムが減ると、温度が下がり、圧力も下がる」 予想外の早めのタイヤ交換は、その後のAFコルセのタイヤ戦略に影響を及ぼし、その結果、中盤ではイェがハードコンパウンドタイヤをダブルスティントで履くことになり、7号車トヨタのニック・デ・フリースの追い上げを許した。 「これは起こったことの結果だ」とクビサは語った。 「レースの最後にもっともパフォーマンスの高いタイヤを履く可能性に戻らざるを得なかったのだ」 「最後の2時間はできる限り最高のタイヤを履くようにするものだが、今回がまさにそのとおりだった」 「安全策を取るためにハードを選んだのは、そのためだ。中古のミディアムタイヤをそのまま行くこともできたが、摩耗が激しい場合はパンクしたり、パフォーマンスが急激に低下したりすることもある」 「そのため、より安全な解決策を選択した。おそらく遅い方のタイヤにはなったが、正しい戦略に戻るための一番安全な方法だった」 [オートスポーツweb 2024年09月02日]