自民裏金、終わらない不正と制度改正の「いたちごっこ」 自浄能力に疑問符、政治不信払拭の解決策とは?
2024年の政界は、自民党の裏金事件と共に幕を開けた。東京地検特捜部は2023年12月、最大派閥の安倍派と、二階派の派閥事務所を家宅捜索。派閥パーティー収入の「キックバック」(還流)を受けたとされる安倍派中枢の松野博一前官房長官、萩生田光一前政調会長、世耕弘成前参院幹事長らの任意聴取も実施した。2024年1月には、現職国会議員の逮捕や安倍派、二階派、岸田派の会計責任者らの立件へ踏み切った。 自民裏金問題で「もはや遠い昔」 ウクライナ電撃訪問、日銀総裁交代、G7広島サミット… 岸田首相の「激動の2023年」を振り返ってみた
「またか」とあきれている国民は少なくないだろう。「政治とカネ」を巡る問題は繰り返されてきた。発覚するたびに制度が改正されるものの、また新たな不正が浮かび上がる「いたちごっこ」が続いてきたのだ。政界、特に自民党の自浄能力に疑問符がつく。 深まる一方の政治不信を払拭するために、専門家は「根本的に制度を直す必要がある」と指摘する。どう改善するべきなのだろうか。(共同通信=中田良太) ▽「政治とカネ」を振り返る:ロッキード事件 げんなりさせるのを承知で、まず過去の主な「政治とカネ」問題や、制度改正を振り返ってみたい。最も有名な事件の一つはロッキード事件だろう。元首相の田中角栄氏が逮捕される衝撃の展開となった。 発端は1976年2月に開かれたアメリカ上院の公聴会だった。アメリカの航空会社ロッキード社による旅客機売り込みを巡り、日本への違法な政治献金が発覚した。その後、ロッキード社側から田中氏に5億円が渡ったとして、東京地検特捜部が1976年7月に田中氏を外為法違反容疑で逮捕。8月に起訴した。東京地裁は1983年10月に懲役4年、追徴金5億円の実刑判決を言い渡した。田中氏は上告中の93年12月に死去した。
田中氏は首相在任中も金権政治が国民の批判を浴び、1974年に退陣した。「クリーン三木」と呼ばれた三木武夫氏が次の首相となり、1975年に政治資金規正法を改正。企業・団体献金を年1億5000万円までと制限し、全ての政党、政治団体に収支報告を義務づけた。 法改正もむなしく「政治とカネ」は政治不信を生み出し続けた。1988年には戦後最大規模の汚職事件が発覚する。リクルート事件だ。 ▽リクルート事件:竹下内閣総辞職、政治改革の機運高まる 1988年6月、リクルートの関連不動産会社の未公開株が川崎市助役に供与されたとの疑惑が報じられた。中央政界に波及し、譲渡先に当時の竹下登首相や、後の首相である宮沢喜一氏ら与野党政治家の名前も浮上。値上がり確実とされた株を政財界の大物らが譲渡され、売却により「ぬれ手で粟」の巨利を得ていたことが判明した。 東京地検特捜部は1989年5月、藤波孝生元官房長官らを受託収賄罪で在宅起訴した。翌6月に竹下内閣は総辞職。後を継いだ宇野宗佑首相が臨んだ7月の参院選は宇野氏の女性問題も重なり、自民党の大敗となった。宇野氏は首相在任わずか69日で退陣した。