自民裏金、終わらない不正と制度改正の「いたちごっこ」 自浄能力に疑問符、政治不信払拭の解決策とは?
一方、政治団体による献金には企業・団体献金のような制限がなかった。2004年に発覚した闇献金事件は、日本歯科医師会の政治団体「日本歯科医師連盟(日歯連)」によるものだった。この事件を契機に、橋本龍太郎元首相が政界を引退した。 2004年1月、落選中の自民党元衆院議員が過去に日歯連から受けた献金額が、政治資金収支報告書上、日歯連側の記載と1千万円ずれていることが判明した。これがきっかけとなり、当時最大派閥だった橋本派(現在の茂木派)の政治団体「平成研究会」の1億円献金隠しが発覚した。2001年7月の参院選前、日歯連会長が橋本元首相と都内の料亭で面会し、1億円の小切手を渡したが、双方とも政治資金収支報告書に記載せず、領収書も発行されなかったという事件だ。 この事件では東京地検特捜部が橋本派会長代理だった村岡兼造元官房長官を政治資金規正法で在宅起訴。後に有罪が確定した。橋本氏は国会などで「記憶にない」と繰り返し、後に不起訴となった。橋本氏は2005年8月に政界を引退した。
日歯連を巡っては、迂回献金疑惑も取り沙汰された。日歯連が自民党の政治資金団体「国民政治協会(国政協)」に行った献金が、国政協を中継して個別の国会議員に渡ったと指摘されたのだ。当時、日歯連は年間約5億円を国政協に提供していたと言われる。名前が挙がった山崎拓副総裁や、献金当時の厚生労働政務官だった佐藤勉氏らは政治資金規正法違反容疑で告発されたが、政治家への献金だと立証するのは難しく、不起訴となった。 一連の問題を受け2005年、政党や政党支部、政治資金団体を除く政治団体間の献金に年5000万円の上限を設け、献金は銀行振り込みとするなどの法改正が行われた。 ちなみに、自民党は2004年9月、党改革検証・推進委員会で政治資金の透明化を図るアクションプランを策定している。委員長は当時の幹事長だった安倍晋三元首相。また、安倍派裏金問題の当事者である世耕弘成氏のウェブサイトによると、世耕氏は「政治とカネのあり方」部会長を務め、透明化プラン作成を「中心となって進めた」そうだ。