キモホラーというジャンル『ナキヨメ』/テレビお久しぶり#122
長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『ナキヨメ』(テレ東)をチョイス。 八方美人コミュニケーション『上田と女がDEEPに吠える夜』/テレビお久しぶり#121 ■キモホラーというジャンル『ナキヨメ』 もはや一大ジャンルとなった印象もある”テレ東ホラー”であるが、しかしこの『ナキヨメ』は、その一大ジャンルに属するのか属さないのかよく分からない、ヘンな番組であった。いうなれば”キモホラー”ではないかと思うのだけども、これは、M-1グランプリ2023にて『ずっとキモダチ』というキャッチフレーズが話題となった(本人たちはイヤがっていた)マユリカの中谷が出演していることに引っ張られているだけだろうか。いや、しかし、キモかったんですねえ、この番組……。 これがどういう番組なのかをこれから説明するが、興味のある方は、それすら知らない状態で見たほうがいいと思うんで、一応ネタバレ注意とさせていただきたい。 心霊スポットであるという廃療養所に訪れた柴田理恵とマユリカ中谷。そのあまりにも暗い屋内をおっかなびっくり進んでいくふたりは、モニターの設置されたある部屋にたどりつく。その画面には、この療養所で過ごしたある男の物語が映し出されていた……。 その物語というのは別に怖いものではなく、いわゆる感動系の再現VTRなのだが、それを見るふたりは、目からこぼれた涙を透明の容器に溜めていく。一体全体なにをやっているのか、涙を流すたびに、その涙を容器で受け止めようとするそのさまは、まさに恐怖と笑いは紙一重といったような奇妙さに満ちている。この絵面で勝負!という感じが伝わってくるというか、今のご時世、この”ワンアイデアさ”は大変貴重ではないかと思うのだ。考察をしてほしがっている感があまりないというか……、いや、あるのかもしれないが…… ちなみに何がキモいのかというと、その溜めた涙を火にかけ、蒸発させて塩を取り出し、廃療養所内を清めて番組は終わるのだけども、それが私には、ちょっとキモいのである。ペロっと舐めてみせたりするところとか……。別にキモくないという人もいるだろう。これは私の個人的感覚であると理解している。だからキモホラーだなんて言うのは失礼なのかもしれないが、私はどうしてもウッとなった。そもそも、ホラーなどキモくてナンボだと思うから、これでまったく構わないのだ。 ともあれ、ヘンな番組であることに変わりはない。番組そのものが、不条理なコントであるようにも思える。それは、映画『来る』であれだけカッコいい霊媒師を演じていた柴田理恵が、まさか塩でちまちまお清めなんかせんだろう……という勝手な刷り込みによるものなのかもしれない。 ■文/城戸