Galileo Galileiが語る、アルバム2作同時リリースの意図、野球からの強い影響
Galileo Galileiがニューアルバム『MANSTER』と『MANTRAL』を2作同時リリースした。「人間の外づら、他者から見たときの性質」をテーマに、「Human」と「Monster」を組み合わせた『MANSTER』と、「ニュートラルなときの人間性」をテーマに、「Human」と「Mantle」と「Neutral」を組み合わせた『MANTRAL』。ミクスチャーからニューウェイヴ、エレクトロまでを横断しつつ、ジャンルには収束されないGalileo Galileiならではの楽曲が14曲ずつ収録された、非常に濃密な仕上がりとなっている。 【写真を見る】ユニフォーム姿のGalileo Galilei 札幌のわんわんスタジオにいるメンバー4人とリモートを繋いでの1万字インタビューで、人間の持つ多面性を表現した作品の中に内包されている、様々な人の人生や物語を感じてもらいたい。 ―アルバム2枚同時リリースで全28曲。どのような構想から制作がスタートしたのでしょうか? 雄貴:2枚組じゃなくて1枚ずつ同時に出すのはずっとやってみたかったことで、僕はsyrup16gの『動脈』と『静脈』がめちゃくちゃ好きなんです。あのアルバムを友達みんなで聴いて、『動脈』が好きなやつと『静脈』が好きなやつでわかれたりするのが最高に楽しかった記憶があって、好き嫌いがはっきり分かれてもいいアルバムを2枚出すっていうのはずっとやりたかったんですよね。実は以前にも何回かアイディア出したことがあって、その時点でご時勢的にもアルバムを2枚出すことに誰もOKをしてくれない感じだったんですけど、今はそういう場所から抜け出てしまい、自分たちでゴーサインが出せる状態になって、ずっとやりたかったしやってみようかなって。 ―BBHFでも対になるコンセプトの作品や2枚組を出していて、コンセプチュアルな作品を作るのはもともとお好きですよね。 雄貴:そうですね。『BBHF1 -南下する青年-』は2枚組でしたけど、今回はどっちかしか聴かれなかったとしてもそれでいいというか、そういう気持ちで制作をしてたんです。 岩井:Galileo Galileiは曲を書いてないと消滅してしまう生物だと思ってるので(笑)、その日に曲ができなくても、曲を書くという行為自体はずっとやってるんですね。そういう意味では、「2つのアルバムを作りたい」と雄貴が言ったときに、メンバーは迷わず「できるよね」ってなったし、多分次は4枚出すだろうなって(笑)。 雄貴:って冗談で言ってたら本当にやるかってなるから恐ろしいよ(笑)。 岩井:社会や周りの環境に書かされてるわけでもないというか、「こういう配信のプラットフォームがあるからこういうふうに攻めなきゃいけない」とか、外的な要因で書かされてるわけではなく、完全にメンバーの関係性や個人が思ってることに基づいて、内側から出てきてるものなので、その源泉は多分止められない気がしてますね。そういう欲望みたいなものって、別に曲を書くっていうことじゃないにしろ、人間には毎日何回も起こるじゃないですか。俺たちはその欲求にすごく忠実なんじゃないかなって。 雄貴:僕らは日々一緒に過ごしてて、ビールを飲みながらみんなで野球の試合を見てゲラゲラ笑ってるタイミングとかからもう曲作りが始まってて、そこからグッて何か持ち上がったタイミングで曲がもう形になってるんですよ。でも「はい、楽器持って曲書いて」って言われたら書けなくて、特に自分はそう思いますね。曲提供の苦労っていうのがあって、自分たちのことだったらいっぱい話せるけど、人に曲を書くときはその人の考えとかを聞いた上で作るわけじゃないですか。それは僕にはすごく難しくて、職業として作家をやってるコンポーザーのは人すごいなと思いますね。 ―岡崎くんと和樹くんは今回の制作はどうでしたか? 岡崎:2枚のフルアルバムを同時にリリースするっていうのは、今の音楽の流通を考えるとなかなかないと思うから、珍しいリリースの仕方だと思われたりすることもあると思うんですけど、自分はこの2枚のアルバムを大作だと意気込んで制作に向かったわけではなくて、どちらかというとラフに、でも期待感もありつつ制作できたなと思っていて。制作自体も根詰めてやるっていうよりは、制作の合間にキャッチボールをしたり、自分たちのありのままの姿で制作に臨めたと思っていて、割と素の自分がアルバムに出せたなっていうのをすごく思いますね。 和樹:2枚アルバムを出すっていう、それをやりたいと思ってやったことが一番重要というか、「2枚アルバム出したら面白いっしょ」じゃなくて、「2枚アルバムを出したい!」っていう、メンバー全員がそういう気持ちになって、それをやり遂げることができたという達成感が自分たちのさらなる成長に繋がった……って言うと中学校みたいだけど(笑)、でもそういう気がします。 雄貴:こうやって話す機会をいただいて初めて気付くことが今回特にあるなと思っていて。というのも、今回ミックス・マスタリングも自分たちでやったので、特に後半が過酷だったんですよ。なので、それぞれの曲を並べた上でしっかり客観的に聴いて、自分たちはこういうアルバムを作ったんだなって思う機会がなかなかなくて。この間やっとこのスタジオに集まって、改めて納品したデータを頭から聴いたんですけど、みんなまだ自分たちが作ったものを理解してなさすぎて、いつの間にかもう曲が終わっちゃって。アルバムについての会話は一切なく、むしろ中盤ぐらいからコロコロコミックの話をずっとしてて(笑)。 ―「コロコロ派対ボンボン派」みたいな(笑)。 雄貴:そう、ボンボン派ってこういうやつだったよねみたいな、もうその時点で次に進んじゃってる感じがするんです(笑)。だから今作は特にこうやって話をして、いろいろ自分たちで気づくことがあるし、実際にリリースされて、ツアーをやって気づくことが今まで以上にいっぱいあるんじゃないかなと予感してますね。