Galileo Galileiが語る、アルバム2作同時リリースの意図、野球からの強い影響
エレクトリックでオルタナティブな『MANSTER』、アコースティックでオーガニックな『MANTRAL』
―音楽性で言うと、ジャンル分けを意識的にやってるわけではないのかなと思いつつ、『MANSTER』の方がエレクトロニックなものもロックなものも含めて、アップダウンがある作品になっていて、『MANTRAL』の方が管弦をはじめ生感のある楽器の割合が多くて、それこそニュートラルなテンション感の作品だなという印象だったんですけど、本人たちとしてはどこまで意図的で、どこまで自然発生的でしょうか? 雄貴:7曲ずつぐらいできたあたりで振り分けをガチでやり始めたんですけど、でも結局最初に振り分けた曲と全く入れ替わっちゃってて、最後にマスター用のデータを書き出すまでずっと悩んでるというか、ずっとああだこうだやってました。やっぱりアルバムって面白いなと思ったのが、「激しい曲はこっち、激しくない曲はこっち」みたいに分ければいいように思えるけど、僕らが作りたかったのはそういうことじゃなくて、1枚のアルバムとしてそれぞれ成立してるものを作りたかったんです。ずっと考えてて、悩ましかったんですけど、でも楽しかったですね。打線を組んでるみたいな感じでした(笑)。 ―ミックス・マスタリングまで自分たちでやったとのことですが、エンジニアリングの作業的な面では和樹くんがその役割を担ってると思うんですけど、いかがでしたか? 和樹:今回岩井くんがおうちにスタジオを作りまして。今まではこのわんスタでミックス・マスタリングを全部やろうとなると、どうしてもモニターと机が1個しかないので、その日スタジオに来て、家に帰るまでの10時間ずっと椅子に座り続けてるみたいな感じだったんですけど、今回はミックスを岩井くんのスタジオとわんスタで分けてやったんです。なので、『Bee and The Whales』と比べると労力自体は減りました。 雄貴:『MANSTER』がわんスタで、『MANTRAL』が岩井くんのスタジオで、全部ではないですけど、『MANTRAL』は岩井くんが1人でがっつりやる曲も多かったですね。 岩井:今回サウンドの違いは出たと思います。尾崎雄貴は破壊と構築の人間だと僕は思ってるんですよ。破壊的な音作りをして、1回ぶち壊したものを再構築するっていうことを思い切ってやるタイプ。でも僕はきれいに構築するタイプで、そこが2作の音の違いに出てるんじゃないかな。自分はどっちも実験的な作品だと思ってるんだけど、よりエレクトリックでオルタナティブな『MANSTER』、アコースティックでオーガニックな『MANTRAL』っていうところに繋がってるのかなと。 ―まさにその印象があって、言ってみればFOLKSの音楽性は『MANTRAL』寄りというか、そういう相性の良さもあったのかなって。 岩井:さっき和樹が僕に話を振ってくれましたけど、和樹に対して言及すると、和樹は武器商人なんですよ。いつも新しい武器を仕入れてくるんです。 ―機材のこと? 和樹:そうですね。プラグインだったり、「これがあったら楽らしい」みたいな情報を集めて、自分がいかに楽をするかを考える(笑)。 雄貴:和樹は僕が作品についてめっちゃ大事な話をしてるときとかでも、パソコンでプラグインを調べてるんですよ。ホント腹立つ(笑)。 岩井:面白いおもちゃを見つけたみたいな感じで教えてくれるんですよね。で、「これめっちゃ面白いじゃん!」って、そのおもちゃで遊んでたら曲ができちゃったみたいなパターンもある。そういう意味ではエンジニアリング的な立場と言いつつ、クリエイターな要素もあるのかなって、それは今作でより顕著に出てる気がします。 ―じゃあ、岡崎くんのバンドの中での役割は? 岩井:雄貴と和樹と俺でいると上手く回らないときに……。 雄貴:めっちゃ同じこと言おうと思ってた。モチベーターだよね。 岩井:本当にそう。 雄貴:「MANSTER」、「ヴァルハラ」、「ブルペン」、「PBJ」、「UFO」とか、僕にとっては全部岡崎くんがいなかったら書けなかった曲ですね。リンゴ・スターみたいだなと思うんですけど、岡崎くんがいるだけで曲が書けるときがあるんですよ。僕らベースから曲を作ることが多くて、岡崎くんからベースをもらって、こういうメロかな、こういうギターかなとか、それが最初のプロセスとしてあることが多いから、最初の相手が岡崎くんなんですよね。ここからゲームスタートみたいな……キャッチャーだよね。 岡崎:キャッチャーで(雄貴が)ピッチャー。 雄貴:本当にそんな感じの流れですね。前のアルバムもそうだし、岡崎くんがサポートで入ってくれたあたりからもうそんな感じ。岡崎くんがいなくて3人だったら、もしかしたら生まれなかった曲たちが結構多いんじゃないかな。 ―さっき挙げてくれた「MANSTER」、「ヴァルハラ」、「ブルペン」とかで言うと、ロック色が強い曲というか、ミクスチャーっぽい要素がある曲ですよね。 岡崎:レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンは高校時代に聴きながら登校してたぐらい好きでした。 雄貴:BBHFのDAIKIくんがずっと「レイジいいよ」って言ってて、それには「大丈夫」って言ってたんですけど(笑)、岡崎くんがいいと言うならと思って聴いて、めちゃくちゃいいってなったので、僕は遅れてきたタイプですね。岡崎くんとレイジのライブ映像をスタジオで見てた時間が実際の楽曲に結構出てるなって。 ―「CHILD LOCK」からもそれを感じます。 雄貴:そうですね。どっちかというと避けてきた雰囲気なんですけど、最近はオフスプリングもいいよね、みたいな感じで、岡崎くんからもらったものは結構でかいよね。「ヴァルハラ」に関しては、ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアのソロがめちゃくちゃ好きで、「Rattle That Lock」のMVを流しながら作りました。