シーズン中は酒断ち すべてを捧げた神戸・武藤32歳シーズン「必要な選手だとアピールしないと」
「明治安田J1、神戸3-0湘南」(8日、ノエビアスタジアム神戸) 神戸が3-0で湘南に快勝し、勝ち点72で2連覇を果たした。 FW武藤嘉紀は32歳のシーズンでチームトップの13得点をマークし、フルスロットルで駆け抜けた。吉田孝行監督も「能力は半端ない。あのパワーを90分間維持するなんて」と舌を巻くフィジカル。武藤自身も現在を「状態は上がっている」と評し「体の使い方も脱力も学び、経験をプラスして今がベスト」と分析している。 2021年8月の入団から2年半。契約最終年を迎え「自分の価値を高め、チームに必要な選手だとアピールしないといけない」と自ら口にするなど、危機感は人一倍抱いている。年齢と向き合い「今までは年を重ねるごとに成長できたが、ここからは自分でプラスアルファやらないと弱くなる」と自らにむち打ってきた。 日々研究を怠らず、SNSで興味を持ったものも次々に取り入れた。自分に合うかを確かめて取捨選択する。今年は目のトレーニングに始まり、夏前は瞬発力を上げるためのジャンプトレ、9月以降に始めたのがハリ治療。「元々ハリは苦手で逃げてきたが、深いところをほぐす意味でやってみたら体との相性がよかった」と疲労回復に役立ったという。試行錯誤しながら体と向き合う。 食生活にも気を使い、シーズン中は酒類を口にしない。「筋肉が硬くなるリスク、次の日に残るリスクを考えると、一瞬の楽しさのためにコンディションをマイナスにする必要はない」と、試合でストレスがあっても我慢する。それでも、休日は友人や後輩とおいしいものを食べることが楽しみの一つで「きょうだいが多い家庭で育ったので1人が好きじゃなく、基本的に誰かと一緒にいる」と満喫する。 都内の自宅では2女1男の良きパパに戻る。親指、人さし指、中指で顔を覆うゴールパフォーマンスは末っ子の長男が考案し「これやって!」とリクエストされたもの。「息子も毎回、まねします。妻から画像が送られてきて『新しいポーズをやって』とねだられるが、他の選手のものと似ていて無理だったり…」と目尻を下げる。「東京に戻る機会は少なく、家族に辛い思いをさせている。でもファンが期待してくれて、自分の価値を高めるのはサッカーしかない」。すべてをサッカーのためにささげている。 ◆武藤嘉紀(むとう・よしのり)1992年7月15日、東京都世田谷区出身。バディSCでサッカーを始め、中学からFC東京の下部組織で育つ。慶応高3年時にトップチーム昇格を打診されながら慶大経済学部進学。14年に大学在学のままFC東京に加入した。同年9月のウルグアイ戦で日本代表デビュー。15~18年はドイツ1部マインツ、18~20年はイングランド・プレミアリーグのニューカッスルでプレー。20年にスペイン1部・エイバルへ期限付き移籍。21年8月に神戸加入。