日本人じゃなくなる・・・あふれた涙 選んだのはカナダ代表 パリ五輪「金」の出口クリスタ、批判されても切り拓いた道
勇気を持って踏み出した先に 「一度も後悔していない」
勇気を持って踏み出した先には、かつてない景色が広がっていた。カナダ代表の雰囲気は「とにかくポジティブ」だった。最初のうちは大会で勝てなかったものの、常に前向きな言葉を掛けられた。モチベーションを保って海外の大会を転戦した経験が、世界女王への足場を固めることにつながった。「日本の武道としての柔道、カナダのスポーツとしての柔道。二つの柔道を知れたのは自分の財産」。それまで日本代表だった「さみしさ」こそあれ、「振り返って後悔したことは一度もない」とこの日も言い切った。
日本生まれで他国で活躍「自分たちが体現」
カナダ国籍を選んだ当初はSNS(交流サイト)で批判もされた。しかし、正統な権利の上での選択であり、先人がいない道を切り拓く姿は多くの人の希望にもなった。決勝で争った許海実(ほみみ)選手(21)=韓国=も日韓のハーフ。日本生まれの柔道家が他国に活路を見出す例は今では珍しいものではない。メダリスト会見では許選手と並び「もう一つの国籍を選択して頑張る選手は増えている。自分たちがそれを体現できているんじゃないか」と金メダルを輝かせながら胸を張った。
子どもたちに伝えた”金言”
地元の塩尻市でパリ五輪直前の7月6日にあった壮行会後、子どもたちへのひと言を求められた。「自分が正解だと思ったら正解」。言葉には力がこもっていた。選択肢が多岐に広がるこれからの社会に立ち向かう若者たちの背中を、その金言がぐっと後押ししてくれるはずだ。