【解説】“紀州のドン・ファン”殺害事件 元妻無罪判決の理由は…覚醒剤“誤摂取の可能性否定できず”
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「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家の男性を殺害した罪などに問われた元妻に、和歌山地裁は12日、無罪を言い渡しました。無罪判決となった理由について、詳しくみていきます。 ◇ 今回の裁判について改めて整理します。
6年前の2018年、“紀州のドン・ファン”とも呼ばれていた資産家の野崎幸助さんが和歌山県田辺市の自宅で亡くなりました。当時77歳だった野崎さんの死因は急性覚醒剤中毒でした。 そして、3年がたった2021年、野崎さんを殺害したなどとして逮捕・起訴されたのが元妻・須藤早貴被告(28)でした。須藤被告は野崎さんが亡くなる3か月前に結婚したばかりでした。
裁判の争点となっていたのは、「事件性」と「犯人性」の2つです。まず「事件性」というのが「野崎さんは殺害されたのか」という点。そして「犯人性」については「殺害された場合、被告が犯人なのか」という点です。 これまでの裁判で、須藤被告は「社長を殺していません」と無罪を主張していました。そして、弁護側はそもそも事件ではないし、須藤被告が犯人でもないと主張していました。 一方、検察側は「覚醒剤を摂取させることができたのは、被告以外にいない」などと無期懲役を求刑していました。 しかし、直接的な証拠はなく、須藤被告を「間違いなく犯人」と言えるのか、検察側は状況証拠を積み上げるため、異例とも言える20人を超える証人尋問を行ってきました。 膨大な証言と情報、そして双方の主張を裁判員と裁判官がどう判断するのか、注目されているなかでの、今回の無罪判決でした。
ここからは元大阪地検検事の亀井正貴弁護士に話を聞きます。 ──亀井さんは今回の無罪判決を率直にどう受け止めましたか。 一部無罪でなく完全無罪なので、予想はしていなかったです。その意味では衝撃でした。 ──予想していなかった、その大きな理由としては何が挙げられますか。 検察はこの間、状況証拠をかなり積み上げてきました。あと残るのは直接的に覚醒剤を摂取させたかどうか。つまり、合理的に苦みが残るような覚醒剤を摂取させることができるかということについて説明がつかない、その部分だけは残っていた。その意味では、どちらに転ぶかというところだけが残っていると思っていたのですが、今回は覚醒剤の入手について、須藤被告が覚醒剤を入手したかどうかについての事実も飛ばしましたから、これはかなり衝撃的でした。